いつも、出張に行く時は機内で暇をつぶそうと文庫本を一冊買うのですが、今回はこれ

ボトルネック米澤穂信

基本的に学生が主人公の作品の多い作家さんなんですが、今回も同様に高校1年生のリョウが主人公です。(後で分かったのですが、「氷菓」や「インシテミル」の作者さんなんですね)

ちなみに「ボトルネック」とは、交通渋滞の原因等を指し示す言葉です。


「もうひとつの世界」で知った痛ましい「若さ」の輪郭。青春ミステリの新旗手、新潮文庫に登場!
亡くなった恋人を追悼するため東尋坊を訪れていたぼくは、何かに誘われるように断崖から墜落した……はずだった。
ところが気がつくと見慣れた金沢の街にいる。不可解な思いで自宅へ戻ったぼくを迎えたのは、見知らぬ「姉」。
もしやここでは、ぼくは「生まれなかった」人間なのか。世界のすべてと折り合えず、自分に対して臆病。
そんな「若さ」の影を描き切る、青春ミステリの金字塔。(新潮社サイトより)

たどり着いた世界は自分が生まれなかった平行世界

自分のかわりに死産したはずの姉が生活し、自分の世界では不幸になっている父も母も兄も、姉のいるこの世界では皆何とか上手くやれている。そして二年前に死んでしまったはずのノゾミですら生きている。

じゃあ自分の存在って何なんだ?まさしく”ボトルネック”でしかないんじやないか?それは排除されるべき存在なんじゃないのか?

残酷な現実を平行世界で突きつけられ、今までの何もせず、何者とも関わらず、自分とすらも向き合わずに失望して過ごして来た(何者にすらならなければいいと思って生きて来た)自分の存在って何なんだ?

自分の中にノゾミと言う存在が生まれ、ノゾミの死に因って、”絶望”に向き合おうとした場所から始まる自分探し。

様々な評価や解釈のなされる本作ですが、「失望のままに終わらせる真っ暗な海」と「絶望しながら続く曲がりくねった道」、僕(リョウ)がどちらを選択したのか?

人を模倣することで自分から目を背けていたノゾミ、何でも人任せで自分で決められないリョウ、本作を最後まで読んでその結末に釈然としない読者

その何が違うと言うのか?

読者の僕らこそが、その作者の問いかけに答えを出すことこそ作者の言いたかった事なんじゃないか?

この作品の登場人物は僕ら自身だし、この作品は現実世界のど小かしこに存在する「問い」そのものなのだ。

ただただ示されたもの、差し出されたものを消費し、思考を停止していることに気づかない「パッケージ」という流動食ばかりを摂取するのでなく、何故作者はこの作品を発表したのか?この本を読んだという方と感想を語り合いたい次第なのです。