H大学病院に紹介状を書いてもらい、朝一番に受付をし、指示されるままにレントゲンやMRI、CTの検査を受け、診察室に呼ばれたのは午後4時を過ぎていました。

元々病院で待たされるのは大嫌いで、いつもイライラしていたのですが、さすがに難病を患うと観念するのか?持参した小説をただひたすら読みふけって呼ばれるのを待っていました。

気づくと待ち合いには誰も居らず、恐らくその日の予約患者を全て見終わったあとに、名前が呼ばれたようでした。

指示された診察室に行くと、眼鏡をかけた歳の頃40前後くらいのスマートな顔立ちの先生が、検査結果を眺めながら口を開きました。

「今日は大変お待たせしました。検査の結果をお伝えしますと、後縦靭帯骨化症です。ご存知かもしれませんが、こちらは特定疾患、難病指定の病気でして、原因は現在のところ不明です。この骨化して固く肥大した靭帯が、神経の邪魔をして、色々な障害が出る病気です。」

と、背骨の模型を指し示しながら説明されました。

「すでに垂れ足と痛感鈍麻の神経障害が出ていますので、手術をお勧めします。ちなみに当院で多い術式例は、椎弓を後ろから切り開く術式です。」

?後ろを切り...開く?

病巣そのものは後ろじゃなくて前っかわにあるんじゃなくって?

見なれた光景なのだろうか?その医師は続けてこう説明した。

「人間の背骨は横から見るとS字にカーブしています。首は前に湾曲し、背中は後ろに湾曲、そして腰はもう一度前に湾曲していますね。上から前湾、後湾、前湾...
首、つまり頸椎の場合は、後ろ側にスペースを作ってあげることで、脊髄が後ろに逃げて来て、骨化した靭帯の影響を受けなくなるんです。」

な、なるほど...

「さらに言えば、しっかりと肉眼で見ながら骨を切り開くので、内視鏡などで裏側の骨化靭帯を取り除く術式に比べて、安全度も高いです。」

た、たしかに...

「ただ、◯◯さんの場合、胸椎にも骨化靭帯が見られます。先ほど説明した通り胸椎は後湾していますので、前湾している首に比べると、脊髄が後ろに逃げて来にくいので、首に比べると効果が薄いです。」

え?てことは...

「胸椎のケースは後ほど説明いたしますが、すでに神経症状が出ているので首に関しては、やはり手術をお勧めします。」

難病だと聞かされて1週間。ようやく少しずつ進むべき方向が示されはじめた気がした。

その8につづく


OPLL(後縦靭帯骨化症)と診断されて読み漁った本