「エンゼルスはトレード期限前のショウヘイ・オオタニへのオファーに耳を傾ける意向だ」
現地7月14日、ある現地メディアが大谷選手の去就に関する特集記事を掲載して、日米の野球ファンをざわつかせました。
この記事を執筆したのは、スポーツジャーナリストのジョン・モロシ記者。
同記者は球宴前の時点では
「オオタニがトレードに出される可能性は低いだろう」
と予想していました。
しかし、ここに来て
「一転して球団の方針が変わったようだ」
と、これまでとは正反対の意見を報じたのです。
実際、エンゼルスのオーナーであるアート・モレノ氏も、ペリー・ミナシアンGMも
「大谷選手をトレードに出す意向はない」
とコメントしており、ファンや識者の間でも
「今シーズン中のトレードはないのでは?」
と予想されていました。
モロシ記者がソースを明かしていないため、真偽は定かではないものの、この記事をきっかけに、背番号17の去就報道が再加熱することになってしまいました。
これまでも、ポストシーズン進出の可能性が低くなるたびに、大谷選手のトレード論争がなされており、大の大谷選手ファンでも知られるベン・バーランダー氏も
「エンジェルスはオオタニをトレードに出すという、MLB史上もっとも痛みを伴う決断をしなければならない」
と急失速したチームの状況を憂い、スポーツジャーナリストのロブ・パーカー氏も
「主力選手を怪我で欠いているとなれば下降する一方だ。私がエンゼルスならファンが泣き叫ぼうとオオタニをトレードするしかない」
と厳しい口調で持論を展開していました。
残り2週間と迫ったトレードデッドラインまでに動きはあるのか?
それとも残留してシーズン終了後に退団するのか?
もしくは来シーズン以降もエンゼルスでプレーするのか?
いま大谷選手の去就の動向が、現地で大きな注目を集めているのです。
今回は
・なぜ「大谷選手をトレードに出すべき」という意見が飛び交うのか?
・毎年7月にトレードの報道が活発になる理由
・そもそも「トレードデッドライン」とは何なのか?
について、MLBに詳しくない方にもわかりやすくご説明いたします。
◆今年は現地時間8月1日「トレードデッドラインとは?」
7月になると、毎年のようにトレードの話題がスポーツメディアで賑わいます。
それは、トレードデッドラインと呼ばれる期限が7月末日前後に設けられているためです。
2023年のトレードデッドラインは8月1日。正確には米国東部の8月1日午後6時(日本時間8月2日午前7時)です。
MLB球団は、この期限を目安に「自チームがポストシーズンに進出可能かどうか?」を判断して、一斉に戦力の交換・入れ替えを行います。
NPBと違ってMLBでは、そういった部分は非常にドラスティックに行動するため、たとえ看板選手であっても
「今シーズンは諦めて、来年以降の戦力補強に切り替えよう」
と若手有望株選手や補強が必要なポジションの選手と引き換えにトレードに出すことは、珍しいことではありません。
逆に好位置につけるチームの場合、トレードで優秀な即戦力選手が加入することで、フロント陣の本気度が伝わり、選手たちの士気も上がります。
逆に、何の補強もしない場合、あきらめムードにもなりかねません。
それほど「トレード期限」は、米球界では重要な1日に位置付けられているのです。
2017年のトレードデッドライン直前には、ダルビッシュ有投手が当時在籍していたテキサス・レンジャーズからロサンゼルス・ドジャースへ移籍し、ワールドシリーズ進出に大きく貢献しました。
NPBでは依然としてトレードに対して、マイナスのイメージがあるかもしれませんが、MLBの場合は「必要とされての移籍」。
移籍先でプレーオフの舞台に立てる可能性があるので、選手も前向きに捉える傾向にあります。
◆トレードデッドライン以降はトレードできないの?
トレードデッドラインを越えても、トレードを行うことは可能です。
しかし、期限以降にメジャー契約選手をトレードしたい場合は、まず全球団にウェーバー公示する必要があります。
ちなみにこの「メジャー契約選手」とは、支配下登録しているロースター40人のことです。
次に、聞き慣れない「ウェーバー」という言葉ですが、これは「権利を放棄する」という意味です。
簡単に説明するとウェーバー公示とは
「この選手とメジャー契約を放棄するので、どこか欲しいチームはいませんか?」
と他球団に募るということです。
ウェーバー公示された選手は、残り29球団の全てが指名することができ、その優先権は成績の悪いチームの順となります。
指名された場合、その球団との間でトレードや金銭などの交渉を行って、選手の移籍が成立します。
一方で、トレードデッドラインまでは、ウェーバー公示をせずに40人枠の選手をトレードに出すことができます。
つまり、トレードデッドラインまでは「トレードをしたい球団間で自由に交渉ができる」のに対して、
期限をすぎると「トレードに出したい選手を全球団に知らせて、指名のあった球団と交渉しなくてはならない」ということです。
期限をすぎると「トレードに出したい選手を全球団に知らせて、指名のあった球団と交渉しなくてはならない」ということです。
MLBにはこのトレードに関するルールがあるため、各球団は今行っているシーズンの動向から、ポストシーズンに進出できるかどうかを判断し、期限前の7月後半に一斉にトレードを行うのです。
ポストシーズン進出が可能だと判断したチームは、即戦力の主要選手を他チームからトレードで入団させ、ワールドチャンピオンを目指します。
逆に言えば、ポストシーズン進出が不可能だと判断したチームは、主要選手と引き換えに複数人の若手有望株を得て、来季以降の立て直しに舵を取ります。
◆なぜエンゼルスは大谷選手をトレードしたほうが得なの?
多くのメディアや識者が口々に「大谷選手をトレードに出すべき」と論じています。
その理由は、大谷選手が今オフにフリーエージェント(FA)の権利を得ることも、大きく影響を与えています。
トレードが100%球団の意向で行えるのに対して、FAは選手が自由に全球団と交渉し、来季プレーするチームを選ぶことができます。
これまでのコメントから、大谷選手が「レギュラーシーズンを勝ち抜いて、ワールドチャンピオンになる」ことを望んでいるのは明らか。
もし今シーズン、エンゼルスがポストシーズン進出を逃してしまえば、大谷選手はオフのFAでエンゼルスを出ていくのでは?というのが大方の予想です。
エンゼルス視点で考えると、FAで大谷選手を失う場合、得られるものは2024年ドラフト時の指名権くらい。
言い換えれば、エンゼルスは、何の見返りもなしに大谷選手という球界屈指のスター選手を失ってしまうことになります。
一方で、トレードの場合は複数名の若手有望株に加えて、大谷選手を引き留めようと用意していた莫大な年俸も浮くため、それを原資にオフに他球団のFA選手を獲得できるかもしれません。
エンゼルスは、唯一無二の二刀流スターを失うかわりに、来季以降の新しいチームの形を見据えた補強に全ブリ出来るようになるわけです。
もう一つ付け加えると、現地識者の間では
「二刀流スターのショウヘイ・オオタニこそ、ワールドシリーズの舞台に立つべきだ。それが野球界のためになる」
と今や球界の顔である大谷選手にふさわしい舞台を用意できる「強いチーム」への入団を望む意見も出ています。
連日のように、大谷選手をトレードすべきかどうか?メディアが騒ぎ立てているのには、こういった事情があるのです。
◆主力の大量離脱で急失速!?不運続きのエンゼルス
2023年シーズンは、エンゼルスも9年越しのポストシーズン進出に意欲を燃やし、超大物とはいかないまでも、攻守ともに効率的な補強を敢行。
一時はア・リーグ西地区2位、ワイルドカード圏内にも入るなど、好調を維持していました。
しかし6月中旬になってエンゼルスに不幸が降りかかります。
攻守にわたり活躍していた新戦力のジオ・ウルシェラ選手が走塁の際に転倒し骨盤を骨折し今季絶望。
さらに同時期に、主軸を打つアンソニー・レンドン選手が手首に死球を受け離脱すると、守りの要のザック・ネト選手も左脇腹を痛め故障者リスト入りしてしまいます。
3人のレギュラー内野手を立て続けに欠いたエンゼルスは急遽、エドゥアルド・エスコバー選手とマイク・ムスタカス選手の二人のベテラン内野手をトレードで補強。
傷だらけになりながらも、大谷選手の八面六臂の大活躍もあり、6月終了時点で44勝39敗と何とか勝ち越しを維持していました。
しかし7月に入ってさらに状況は暗転。
これまで打線の中軸を担っていたブランドン・ドルーリー選手が肩痛で7月2日から故障者リスト入りすると、7月3日にはチームの中心であるマイク・トラウト選手が左手有鉤骨を骨折する大怪我を負ってしまいます。
悪いことは重なるもので、翌7月4日には故障から復帰したばかりのレンドン選手が今度は自打球を左膝に当てて途中交代。
さらに7月8日のロサンゼルス・ドジャース戦では、テイラー・ウォード外野手が股関節の不調を訴えて欠場となった上に、トラウト選手の穴を埋めるべくマイナーから昇格したジョー・アデル外野手がスイングの際に左脇腹を痛め、そのままベンチに下がってしまいました。
内野レギュラーが4人全員、中軸を打つトラウト選手、レンドン選手に、左翼のレギュラーのウォード選手、後半戦の秘密兵器アデル選手、これに4月攻守に渡って輝きを放っていたローガン・オホッピー捕手も加えれば、故障した野手だけでラインナップが組めてしまいます。
今季開幕戦のスタメンで大谷選手以外でベンチに残っていたのは、ハンター・レンフロー外野手とルイス・レンヒーフォ内野手だけという悲惨すぎる有様。
最大8あった貯金も切り崩し、球宴前には44勝45敗と勝率5割を切ってしまいました。
6月末までは、球団も「今年こそ大谷とトラウトがプレーオフの舞台で輝くのをファンに見せたい」と7月のトレード期に、大型補強を敢行し、チームの強化を図る腹積もりだったはずです。
しかし、トラウト選手の骨折とチームの急失速で、そのモードに入りづらい状況になってしまいました。
7月のトレード期に、エンゼルスが大型補強をしないとなれば、それは今季のポストシーズン進出を諦めたということに他なりません。
◆「わずか3ヶ月でもオオタニが欲しい!」名門2球団が熱烈LOVEコール
今オフにFAとなる大谷選手の場合、トレードで獲得しても、在籍するのは8月から最大でポストシーズンが行われる10月までの約3ヶ月間です。
短い期間での在籍となるため、FAイヤーを迎える選手をトレードで獲得することを「レンタル移籍」と呼ぶこともあります。
特に大谷選手の場合は選手としての能力もさることながら、広告や集客などフィールド外の金銭的メリットも莫大なため、エンゼルス側も強気の交渉をするはずです。
大谷選手をトレードで獲得する球団にとって、わずか3ヶ月しかいないかもしれない選手と引き換えに、若手有望株選手を大量に差し出すことは、リスキーであるとも言えます。
一方で、大谷選手が自軍の選手となれば、在籍期間中に代理人を通じて長期契約の打診や交渉を自由に行えるため、大谷選手に対して
「うちのチームは強いだろう?今季はもちろん来季以降もポストシーズンに出る自信があるよ」
とか
「うちに来ても、エンゼルスにいたときと同じかそれ以上に、二刀流プレーをストレスなく出来ることがわかったでしょう?」
と一緒にプレーをすることで、言葉だけでなく体験で大谷選手の求めるものを提供することができます。
そして、ポストシーズン進出を目指すチームにとっては、エース級の先発ピッチャーとメジャーNO.1のスラッガーを同時に戦力に加えることができます。
FAで他球団に獲られるかもしれなくても、多くの若手有望株と引き換えに、大谷選手をチームに迎え入れる価値は十二分にあると言えます。
現在好位置につけているチームはもちろんのこと、多くの球団が投打二刀流のメガスターを何とか獲得できないものかと、水面下で画策しているのです。
米メディア『ESPN』のバスター・オルニー記者は、その最右翼として、ニューヨーク・ヤンキースの名前を挙げています。
オルニー記者は
「まずはヤンキースだ。ヤンキース、ヤンキース、とにかくヤンキース!
昨日、様々な情報筋と話をしたが、ヤンキースが最も意欲的である可能性が高い」
とヤンキースがトレード市場で大谷選手の獲得に乗り出すと力説。
ゲリット・コール投手、アーロン・ジャッジ選手、ジャンカルロ・スタントン選手といった主力のスター選手が30代と円熟期に差し掛かっており、ヤンキースにとって、まさに今季が2009年以来となるワールドシリーズ制覇のベストタイミングだからです。
さらにコール投手に次ぐエース級の先発投手が不足していることもあり、攻守ともに大幅な戦力アップが期待できる大谷選手は、喉から出が出るほど欲しい逸材。
2012年の7月23日には、当時マリナーズの看板選手として活躍していたイチロー氏が、ヤンキースにトレードされ、自身2度目となるポストシーズンを経験しました。
イチロー氏同様、大谷選手がピンストライプのユニフォームを着てポストシーズンの舞台に立つ可能性もゼロではありません。
ヤンキースと並んで、ロサンゼルス・ドジャースも大谷選手獲得に意欲を燃やしています。
ドジャースの地元メディア『ロサンゼルス・タイムズ』紙は、「よろめくエンゼルスは厳しさを飲み込み、オオタニをトレードする必要がある」との強烈な見出しをとって、大谷選手のトレードを緊急提言。
同メディアは
「エンゼルスはオオタニを10月まで保持してやがて何も得ずに彼を失うリスクを伴う必要があるのだろうか。
(そのリスクを考えて)彼を8月1日の期限までにトレードして、いつか優勝できるチームへと再建するため、少なくとも先発投手2人と多くの有望選手でロースターを増強するのだろうか」
とエンゼルスのチーム事情を鑑みた上で
「ここで言おう。彼をトレードしなさい。
厳しい状況を飲み込んで彼をトレードしなさい。すべてのマーケティングの利益をあきらめて彼をトレードしなさい。
ファンを怒らせても彼をトレードしなさい。優勝へのチーム再建のために彼をトレードしなさい」
と何度も「トレード」というワードを使って力説しました。
同紙はエンゼルスのここ数年にわたる不振を伝えた上で
「スポーツ界のスーパースターのおとぎ話は、永遠に1カ所に留まりハッピーエンドを迎えることはほとんどない」
と指摘。
二刀流の祖として大谷選手と比較されるベーブ・ルースも、1919年オフにシカゴ・ホワイトソックスからニューヨーク・ヤンキースにトレードされ、移籍イヤーとなった翌1920年には打率.376、54本塁打、137打点、長打率.847とその打棒が開花しました。
また野球以外のスポーツに目を向けると、NBAのスーパースターのレブロン・ジェームズ氏や、NFLの名QBのトム・ブレイディー氏も、過去に移籍した経験があります。
これまで、エンゼルス球団は、損だとわかっていても「大谷選手をトレードに出すことはない」と言い続けてきました。
一方で、オーナーのアート・モレノ氏は、球団売却を突然ひるがえしたりと、朝令暮改の気まぐれオーナーとしても知られており、今後何が起こっても不思議ではありません。
もしかしたら、トラウト選手が不在にも関わらず、一気に大型補強を敢行し、大谷選手との長期契約へのアピールを行うかもしれません。
エンゼルスのフィル・ネビン監督が
「(去就については)我々にとってはコントロールできないことだ。我々の目的は毎日試合に勝つこと」
と語る通り、ことトレード問題に関しては、選手や監督にはどうすることも出来ません。
大谷選手本人も
「ファンの人はすごい僕自身も好きですし、エンゼルスのことが好きで毎日試合を見に来ている人たちですので」
とエンゼルス愛を語った上で
「コントロールできないものではあるので。試合の中でできることをまずコントロールしたいなと思っています。
まずは自分ができることをしっかりやることと、シーズンを怪我なく過ごし、自分の納得したものにしたいと思います」
と、まずは今季のプレーに集中することが大事と強調しています。
球界を代表する唯一無二の二刀流スター・大谷翔平の去就報道は、トレードデッドラインの8月1日まで、収まることはないでしょう。
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