ロサンゼルス・エンゼルスの大谷翔平選手が、MLB史上初となる“投手として600人の打者と対戦し、打者として600打席に立つ”シーズン「600・600」を達成。
さらに、135年ぶり史上5人目となる「150奪三振&150塁打」も記録。
常識を打ち破る数々の歴史的偉業を打ち立てつづけています。
今季、二刀流・大谷翔平の活躍を支えているのが「ピッチングの超進化」です。
後半戦から新たに導入した「ターボ・シンカー」に続けて披露された「縦スライダー」に注目が集まっています。
フリスビーと称される「横スライダー」とは全く軌道の異なる大谷投手の「縦スラ」の驚異的な落差に、「ジャイロ回転しているのでは?」と専門家たちを驚かせています。
今回の記事では、シーズン最終盤にも関わらず超進化を遂げる、大谷投手の新魔球「ジャイロ・スライダー」について絶賛コメントを交えて解説していきます。
◆大谷翔平を進化させた「とんでもない」変化球
米スポーツ専門サイト『ジ・アスレチック』などに寄稿していたブレント・マグワイア記者が、自身が運営するサイトで「2022年のMLBの球種トップ10」と題した記事を投稿。
記事の中で大谷投手のスライダーを、今季14勝7敗、防御率2.06、222奪三振をマークしているシカゴ・ホワイトソックスのディラン・シース投手のスライダーに続いて2位と高く評価しました。
マグワイア氏は
「オオタニは過去数年スプリットで支配的な投球を見せていたが、2022年はスライダーを1番の武器にしている」
と紹介。“魔球”と評された高速スプリットよりも、今季はスライダーが威力を発揮しているとし
「オオタニのスライダーの投球割合は37.3%である。空振り率は37.5%、被打率は.172と、とんでもない数字を残している」
とデータを交えてその威力を伝えています。
「オオタニはこの球を好きなように操る。80マイル台前半で鋭く変化させたり、80マイル台中盤で緩く曲げたりする」
と大谷投手が相手打者や局面に合わせて、スライダーの球速や変化量を操っていると指摘。
今季ここまで14勝、防御率2.47、203奪三振をマークするなど好調な要因を
「オオタニが今季投手として成長した理由はこのスライダーにある」
と言及しました。
◆90度違う変化軸!「横スラと縦スラ」
大谷投手のスライダーといえば“フリスビー”に例えられる超変化する横スライダーです。
9月23日のミネソタ・ツインズ戦においても、2回2死一塁の場面でヘルマイネ・パラシオス選手から空振り三振を奪ったスライダーはまさにフリスビー変化。
“ピッチングニンジャ”の愛称で知られる投球分析家のロブ・フリードマン氏が、自身のツイッターに「横変化は18インチ」と題して実際の映像を公開。
この横滑りスライダーに米ファンも、「フリスビーを投げている」「エイリアン」「魔法使い」と、その変化量の大きさに驚きのコメントを寄せていました。
さらにフリードマン氏は自身のツイッターで、この日大谷投手が投じた2種類のスライダーをオーバーレイ動画で公開。
「オオタニショウヘイのスライダーは、アームの角度によって水平方向(横)と垂直方向(縦)にそれぞれ変化する」
とコメント。
ほぼ90度違う変化軸を持つ2種類の魔球の威力を驚きを持って紹介しています。
フォーシーム、ターボシンカー、フリスビースライダーに新たに加わった対左打者の新兵器「縦スラ」のコンボには、対戦したツインズのロッコ・バルデッリ監督も脱帽。
バルデッリ監督は試合後
「彼は本当に優れた球を持っている。鋭い球を投げられるし、自分の思い通りに投げられていない時でさえ空振りを奪える」
と悪天候にも関わらず6回途中7奪三振3安打2失点と好投した大谷投手に称賛のコメントを残しています。
◆長嶋一茂氏「今年はスライダーを横や縦など3種類投げている」
今年7月、バラエティー番組『ビートたけしのTVタックル』が、大谷投手と千葉ロッテマリーンズの佐々木朗希投手を徹底比較する特集を放送。
その中で、大谷投手が日本ハムファイターズ時代にコーチを務めていた野球評論家の黒木知宏氏が
「今、自分の能力が高いので、ある程度の選手を抑えられるとか、ある程度の投手を打てる能力があるので、ちょっと見下ろして投げられる、打てるという感じがある」
と分析。また、元プロ野球選手の長嶋一茂氏は
「速球の球速は160キロで変わらないけど、今年はスライダーを、横や縦など3種類投げている」
と指摘しました。
黒木氏は番組アシスタントの阿川佐和子さんに
「スライダーはボールが横に流れるけど、大谷選手はそれを縦にも曲げようとしている」
と説明しました。
◆「鬼の縦スラ」で衝撃の奪三振 直後のウィンク
9月17日に行われた対シアトル・マリナーズ戦でも、この「縦スラ」が相手打線を沈黙させました。
初回、大谷投手は1番J.P.クロフォード選手(を遊ゴロに打ち取ると、2番タイ・フランス選手、3番カルロス・サンタナ選手から連続三振を奪う好調な立ち上がり。
特に、サンタナ選手との対戦では、3球目に101.1マイル(約162.7キロ)のツーシームを見せた直後、今度は鋭く落ちる86.8マイル(約139.7キロ)の縦スラで空振り三振を奪って見せました。
サンタナ選手を空振り三振に討ち取った大谷投手は、ベンチに戻る際にスタッシ捕手に向かってウィンク。
圧巻の立ち上がりを見せた大谷投手のウィンクシーンには、視聴者から続々とコメントが寄せられました。
◆「何これ?」米識者が驚いた「ジャイロスライダー」
この日のマリナーズ戦で大谷投手が投じた「縦スライダー」に米識者も注目。
野球専門の米シンクタンク『ベースボール・プロスペクタス』のルーカス・アポストレリス記者が自身のツイッターに
「ショウヘイ・オオタニが多投していた変化球について注目してみよう」
と記し、大谷投手が投じた1球を動画で投稿しました。
1-0とリードして迎えた3回1死、左打席のエイブラハム・トロ選手をカウント2-2と追い込むと、大谷投手は変化球を選択。
直球の握りから指先で切るようにして内角に投げ込まれた87マイル(約140.1キロ)のスライダーは縦に大きく落ちながら変化。
ワンバウンドするほどの落下に、トロ選手もバットを止められず空振り三振。
アポストレリス記者はこの場面について
「彼が通常投げるスライダーとは対照的に、フォーシームの握りをしたジャイロスライダーのように見えた」
と表現しています。
大谷投手のスライダーといえば、ベース板を横切るような横の変化の印象が強く、縦の変化は新鮮だったようで、動画を見た米ファンから
「日本人投手は4、5か月ごとに新しい球を投げるのか?」
「数週間ごとに新球を投げるので、彼のスカウティングレポートを作るのは不可能」
と今季は新たに導入したツーシームにつづけて披露された新変化球「ジャイロ・スライダー」に、続々と驚きのコメントが寄せられました。
『日刊スポーツ』MLB担当の斎藤直樹記者も
「この日20球と39%を占めた『ジャイロスライダー』の落差は最大で46インチ(約117センチ)、平均でも37インチ(約94センチ)と驚異の変化量」
と報じ、この日16球投じたスプリットよりも大きく縦に変化していたと注目しています。
◆データに丸裸にされても負けない超進化
今季マリナーズは、米野球専門誌『ベースボール・アメリカ』において「今、最もマイナーが充実している球団」の第1位に選ばれるなど戦力も充実。
さらに分析担当部門に力を入れていることでも知られています。
「左打者に対する被打率が高い」とされていた大谷投手に対して、左打ちの打者をズラリと並べたこの日のマリナーズ打線も、進化した大谷投手の前に二塁を踏むことすら叶わず沈黙。
腕利きの分析担当者たちに「丸裸」にされても、それを上回る進化を見せつけた大谷投手。
その「引き出しの多さ」そして投手としての「奥深さ」を大いにアピールした一戦となりました。
対戦したマリナーズのスコット・サービス監督も
「オオタニはリーグ屈指の投手。きょうはスライダーの形を変化させていた。100マイルの球を投げるが、それがなくても、スライダーの軌道、球速を変え、あらゆる変化球でアウトがとれる」
と7回3安打無失点8奪三振と圧巻の投球を披露した大谷投手に対して、称賛のコメントを残しています。
今季21年ぶりのポストシーズン進出を目指すマリナーズも、大谷投手の進化スピードには脱帽といったところでしょう。
◆大谷投手は「ジャイロボールを投げられる?」
実は大谷投手はこれまでも「ジャイロ回転」の変化球を投じていたことが知られています。
スポーツライターの丹羽政善氏が、2021年後半戦の大谷投手のスプリットを
「通常のバックスピンではなくジャイロ回転のスプリットである」
と指摘。
ジャイロボールとは、通常のバックスピンと違い、回転軸が進行方向を向いていて、ボールそのものはピストルの弾やドリルのように螺旋(ジャイロ)回転するボール全般を指します。
丹羽氏は、ジャイロスプリットを投げられる投手はMLB全体でも僅かであるとし
「通常のスプリットだった2018年と比較すると、今年の大谷投手のスプリットは14.9センチも落下幅が大きくなっている」
と言及しています。
また、昨季エンゼルスに所属していたサンフランシスコ・ジャイアンツのアレックス・カッブ投手も
「バックスピンのスプリットが一番落ちない。一番落ちるのがジャイロ。ショウヘイのジャイロは、すさまじい落差だ」
と大谷投手のスプリットがジャイロスプリットだった証言。
フォークボールの研究でも知られる東京工業大学の青木尊之教授も
「通常、バックスピンがかかればかかるほど、上向きの力、揚力が働いて、ボールは落ちにくくなる。
大谷選手のフォークボールは回転数が多いときは1分間に1700回転ぐらいするような高速回転だが、綺麗なバックスピンがかかっていたとしたら、あんなに落ちず、もっと落ちが悪いボールになる。
あんなに落差が大きくなるのは『ジャイロ成分』が強いに違いない」
と大谷投手の投じるスプリットの驚異的な落差を「ジャイロ回転」にあるとしています。
◆大谷投手「投げられると思って、子供の頃、真剣にやってました」
大谷投手は昨年、引退を表明していた西武ライオンズの松坂大輔投手について聞かれた際に
「(松坂投手といえば)ジャイロボールじゃないですかね」
と即答。
確かに松坂投手がMLBデビューした2007年当時は、全米が「マツザカが魔球ジャイロを投げられるらしい」と全米から注目を浴びていました。
つづけて「真似して投げたりしたのか?」と質問されると
「どうなんですかね。僕は投げられると思って、子供の頃、真剣にやってましたけど。今はちょっと、僕の実力では難しいなと」
と憧れの投手の魔球に挑戦した少年期を懐かしむコメントを残しています。
自身のスプリットがジャイロ回転していると指摘されると
「ってことは、ジャイロスプリッターでいいかなと思います。意識しちゃうかも」
と笑いながら応えています。
今季後半大谷投手が多投している「縦スラ」も螺旋回転する「ジャイロ・スライダー」である可能性はかなり高いです。
◆スタッシ捕手も衝撃「彼には8つ、9つの球種がある」
チームメイトのマックス・スタッシ捕手も
「ショウヘイの能力で素晴らしいのは、すべての球種をいつでも投げられること。
ゲームプランを確認し、ダグアウトで話し合いながら、マウンドでは相手打者のボールの張り方を見ながら狙いを外して投げることができる。
直球は95マイルから101マイルまでなんでもOK。今年は何度もやっているけど、スライダー、カーブ、カットボールのすべての球種でスピードに変化をつけることができる。
彼には8つ、9つの球種があると言っていい。だから僕は簡単さ。座ってボールを受けるだけなんだ(笑)」
と進化しつづける大谷投手の引き出しの多さを大絶賛。
大谷投手も自身の変化球について
「どういうふうに投げるかよりも、どういうカウントでどこに投げるか、プラス、甘く入っても打ち取れる、ファールになったりするクオリティで投げられているかどうかが大事なので、一番はスポットかなと思います」
と、さらに上を目指す貪欲な姿勢とともに語っています。
速球とスプリットで勝負できるパワー投手の顔を持ちながら、多彩な変化球を操る技巧派としての顔も見せ始めた今季の「投手・大谷」。
本人が「去年よりもいいシーズンになっている」と語る通り、投げるたびに進化を遂げているのです。
「二桁勝利・二桁本塁打」(史上2人目104年ぶり)
「200奪三振・30本塁打」(史上初)
「150奪三振・150塁打」(史上5人目135年ぶり)
「ダブル600対戦」(史上初)
二刀流・大谷翔平選手が、MLBの舞台で数々の歴史的偉業を打ち立てています。
投打における圧巻の活躍の裏には、大谷選手が常に挑み続ける「自分超え」にあると言えるのではないでしょうか?
今シーズンも残すところ数試合。史上初の「ダブル規定数」到達も目前。
さらなる大谷選手の偉業達成に期待しましょう。
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