今季も投打においてチームを牽引する活躍を果たしているロサンゼルス・エンゼルスの大谷翔平選手。
日々歴史的な記録を打ち立てるその一挙手一投足に、世界中の野球ファンが注目しています。
投打に渡る圧倒的なパフォーマンスもさることながら、ファンやチームメイト、ライバル選手に対する紳士的な振る舞いなど、優れた人間性でも知られています。
そんな大谷選手が、不快感をあらわにした疑惑の判定があったことはご存知でしょうか?
◆2度のボークで5回降板「クレイジーだ」解説者も激怒
大谷選手が二刀流プレーを本格的に開始した2021年。
6月11日の対アリゾナ・ダイヤモンドバックス戦において、「2番・投手」で投打同時出場した大谷選手は、自身初となる「1試合2度のボーク」判定を受けます。
問題のボークは3-0で迎えた5回二死一、二塁の場面で起こりました。
4番打者のエドゥアルド・エスコバー選手を迎えた大谷選手は、初球を投じる前にプレートを外して、体を時計まわりに反転させて二塁を向き、牽制をする動作を見せます。
この動作だけで実際に投げなかった偽投に対して、ダン・メルゼル三塁塁審がボークを宣告。
ちなみにルール上、二塁への偽投牽制は認められています。
判定に納得のいかない大谷選手は苦笑いを浮かべて肩をすくめ、両手を広げて「WHY?」のポーズを取ると、その後何度も首をかしげました。
これは、ビデオ検証の申し入れができない項目のプレーのため、ジョー・マドン監督(当時)は、ベンチを出て抗議します。
審判団が集まり協議しましたが、結果は覆ることなく走者は、二、三塁に進塁します。
大谷選手も気持ちを切り替えて、相手打者と対峙。
カウント1-2から5球目に投じたスプリットを、エスコバー選手がハーフスイング。
しかし三塁のメルゼル塁審は、そのハーフスイングのジャッジを下すのではなく、またもボークを宣告。
大谷選手は首をすくめて、控えめに右手で「WHY」の意思を示し、そして苦笑いを浮かべ首をかしげました。
ルールブックにある
「投手がセットポジションから投球するに際して、完全に静止しないで投球した場合」
に該当すると判断されたようで、この2つのボークで走者が還り、1点を献上することになりました。
度重なる不可解な判定に対し、エンゼルスの地元放送局『バリー・スポーツ・ウエスト』で解説を務めた球団OBのマーク・グビザ氏は
「どうしてこれがボークなのか私には分かりません」
と異議。2つ目についても
「これが完全な静止じゃないとどうして言えるのでしょうか?
私にはこの判定は理解できません。2つともです。これは……」
と言葉を詰まらせました。
グビザ氏はリプレーを見てもやはり納得いかない様子で
「あれがボークなんてありえません。私の意見では両方ともありえません」
と怒り心頭。
実況のダロン・サットン氏も「同意見だ」と大谷選手に同情。
実況席ではしばらくの間、判定批判が展開されました。
まさかの連続ボークで3−1、さらにその後、暴投による振り逃げも重なって、この回無安打で2点を失い、1点差に迫られてしまいました。
さらに、大谷選手が降板した直後の6回に救援陣が追いつかれたため、勝ち投手の権利も失ってしまいました。
この2つのボーク映像はツイッター上で拡散され、さまざまな反応を呼びました。
米スポーツ専門メディア『ジ・アスレチック』などに寄稿していたブレント・マグワイア記者が
「これがボーク判定となり、失点を許した」
と2つ目のボークを動画付きで紹介すると、米スポーツベッティングサイト『ウェイジャー・トーク』のアナリスト、デイブ・コキン氏は
「オオタニの2つのボークについて誰か説明しなければならないだろう。2つ目は特に」
と疑問を投げかけました。
米スポーツ専門局『ESPN』などに寄稿するポール・スポラー氏は
「オオタニに対する2つ目のボークへの言葉がない」
と誤審であることを匂わせました。
人気野球ポッドキャスト『トーキン・ベースボール』の公式ツイッターが
「ショウヘイ・オオタニはこのボーク判定に納得いかず」
と、2度目のボークシーンの動画を投稿すると、ファンからはコメントが殺到。批判の声が続々と寄せられました。
◆ダルビッシュ「最初のボークは審判の失策」上原「メジャーあるある」
大谷選手がボークを記録するのはメジャー初、日本でも2014年に一度のみという珍しいプレーです。
試合後、マドン監督も
「私にはノーマルな動きに見えた」
と話すなど、どこが悪かったのか?理解に苦しむ判定となりました。
大谷選手も降板後、三刀流で右翼の守備につく際に、一塁塁審に質問しており
「1つ目は審判に聞いた感じでは、たぶん、(プレートから足を)外すより早く上体が動いているっていう判断だったのかなと思うんですけど」
と試合後のインタビューで答えています。
しかし、2つ目については未だ納得していない様子で
「2つ目に関してはまだ話してないのでというか、どこをどう取ったのか、まだはっきりはしてないです」
と説明する一方で
「僕はそうでもなかったかなと思いましたけど」
と本音を垣間見せました。
サンディエゴ・パドレスのダルビッシュ有投手も
「最初のボークは審判の失策」
と、ボークではなかったと分析しています。
ダルビッシュ投手は、自身のツイッターで大谷投手のボークについて持論を綴り
「1個目のは身体の見ている場所によっては膝が先に動いているように見えるので、そこでボークを取った気がします。
2個目のは静止時間としては短かったと思いますが、取られない時もあるので1個目のボークの後の大谷選手のリアクションに(審判が)イライラしていたのかも知れません」
と見解を示しました。
フォロワーからは
「凄い勉強になりました。リアクション、好き嫌いで判定が変わるのは、審判としてどうなんですかね」
「現役の選手がこうして映像確認して、分かりやすく教えてくれるの本当に助かります」
などの声が寄せられました。
ダルビッシュ投手が指摘するように、2回めのボークに関しては、「教育的指導」とする意見が有力です。
MLBの審判は、若い選手が判定に不満な態度を見せると、さらに判定が厳しくなると言われています。
ロサンゼルス・ドジャースなどメジャー5球団でプレー経験のある斎藤隆氏は
「メジャーでは毎年キャンプの時期に審判員を呼んで講習が行われる。
審判部長から『ボークの判定は人によって基準が違うので難しい。だから、あいまいな動作はしない方がいい』と言われたことを記憶している」
と、ボークの基準の曖昧さを指摘。
その一方で
「2つのボークは意味合いが違う。2つ目はセットは止まっており、ボークには見えない。
こちらは、審判団からの『教育的指導』が含まれたボークではないか」
と分析しています。
また、ボストン・レッドソックスで活躍していた上原浩治氏も、自身のツイッターで
「メジャーあるあるだよなぁ。
マウンド上で 不服な態度を出すと、余計に厳しく目の敵みたいにしてくる。
完全にプレートから足を外してるし、静止して投げてると思うんだけど」
と大谷選手に同情するコメントを残しました。
阪神、ダイエーOBで野球評論家の池田親興氏は、1つ目のボークについて
「NPBで、こういうケースでボークを取ったのは見たことがない。
そこまで厳密に取るなら、ほとんどの投手の二塁牽制はボークになるだろう。
今までと、同じ牽制の動作をして突然ボークを宣告された大谷が困惑するのも当然。審判の誤審です」
と大谷選手を擁護する意見を述べ
「メジャーでは、審判への抗議など反抗的な態度を見せると、より厳しく見られる傾向があるそうだが、ボークを抗議された腹いせなのか、あるいは、大谷が注目選手だからなのか、それとも他に理由があるのか、悪意を感じるボーク判定に見えた。
メジャーであろうとNPBであろうと、審判は中立の立場でゲームの主役になるべきではない。
大谷が今後、牽制の基準に悩むことがないように球団は公式に抗議し審判の見解を明確に引き出すべきだろう」
と強く訴えかけました。
ネット上でも、判定への不満や、メジャーの文化の違いを指摘する声が相次ぎました。
◆34年ぶり珍事にピッチャー“激怒” 1イニングに3度のボーク
不可解なボーク判定の被害者は、若い投手だけではありません。
2022年9月27日に行われたマイアミ・マーリンズ対ニューヨーク・メッツ戦では、同じ投手が1イニングに3度ボーク判定を受け、監督とともに退場処分を受けるという、珍しいシーンがありました。
マーリンズ3点リードの8回2死一塁、リリーフ登板したリチャード・ブライヤー投手が、ピート・アロンソ選手にセットポジションから初球を投じると、一塁塁審がボークの判定。
これまでのキャリアの中で一度もボークを犯したことになかった35歳のブライヤー投手も、これは納得いかないと、ボークを宣告したジョン・タンペイン審判に対して声を荒らげて猛抗議します。
しかし続く3球目、さらに5球目にもボークが宣告され、一塁走者が合計3つ進塁してホームイン。
1イニングに3つのボークは、メジャーでは1988年以来34年ぶりの珍事で、判定に抗議した同投手とドン・マッテイングリー監督がそろって退場処分となりました。
米メディア『ジョムボーイ・メディア』が公式ツイッターに動画を投稿すると、多くのファンも判定に疑問を呈しました。
ブライヤー投手による3度のボークの理由は明らかにされていないませんが、初球のセットポジション時に完全静止していないと判断されたようで、恐らく2つ目以降は大谷選手の場合と同様に、抗議に対する見せしめだったと思われます。
◆見せしめに要注意!かつてイチローも抗議して退場処分に
野球に限らず人間が行う判定には、どうしても間違いが起こります。
一般的に、MLBの審判によるストライクゾーンの判定率は約91〜92%と言われており、さらに審判ごとの個人差もあります。
MLBでは、数年に渡ってAIによるロボット審判の導入を検討していますが、それはまだ先の話。
問題はそういったヒューマンエラーではなく、審判が故意に誤審を行うケースです。
日本でも審判の判定に批判的な態度を示すと、ストライクゾーンギリギリの球を不利に判定されることもたまに見受けられますが、MLBほどあからさまではありません。
ある米メディア関係者は
「審判の判定は絶対。露骨な態度を取りすぎると敵に回します。
オオタニにボークを宣告したメルゼル審判は、名門・ホプキンス大卒で数学教育の修士号を持つ秀才で厳格ともっぱら。
オオタニが審判から『要注意人物』としてマークされても不思議ではありません」
と懸念しています。
まして大谷選手は、投手と野手の二刀流。
投手は週に1度の登板で済みますが、打者としてほぼ毎日のように試合に出ています。
実際に、このシーズンの大谷選手は、打者としても不可解な判定に苦しめられていました。
もし今回のようなアピール行為を頻繁に行うと、これまで以上に際どいボールをストライクにされるなど、2倍、3倍になって、跳ね返ってきてもおかしくありません。
その結果、これまで一度もなかった退場処分を受けてしまうかもしれません。
当時シアトル・マリナーズに所属していたイチロー氏も、球審へのアピールが侮辱行為ととられ、人生初の退場処分を受けています。
大谷選手が高校生の頃に作成したマンダラチャートには
『メンタル』の欄に「一喜一憂しない」「頭は冷静に心は熱く」
『人間性』の欄に「愛される人間」「礼儀」
と書いてあり、さらに
『運』の欄には「応援される人間になる」「審判さんへの態度」
と記入されていました。
一時的とは言え、不満をあらわにしてしまったことを反省した大谷選手は、試合後
「久々に、こう、なんて言うんですかね、マウンドでイライラしてしまったのかなというところはあるので。
そこらへん、(自分は)まだまだだなっていう感じかなとは思うので。
どういう状況でもしっかりと抑えることに徹することができれば、良くなると思う」
とのコメントを残しています。
実際に大谷選手は降板した後しっかりと気持ちを切り替え、7回に打者として勝ち越しのきっかけとなる二塁打を放ち、チームの4連勝に貢献しました。
言いがかりに近い不利な状況からでも引きずらず、次のプレーに集中できるのですから、大谷選手は本当に強いメンタルの持ち主ですよね。
元々"極めて紳士的"と言われていた大谷選手の審判に対する態度は、この事件以降さらに完璧なものとなっています。
今季2勝目をあげた4月11日のワシントン・ナショナルズ戦では、投球のたびに左腕を触る仕草を見せていた大谷選手を疑った審判を、一転笑顔にさせて話題となりました。
粘着物質の使用を疑った球審が、マウンドを降りる大谷選手を呼び止めます。
険しい表情で大谷選手の左腕をポンと叩くと、そこには自らサインを出す電子機器「ピッチコム」が巻きつけられていました。
事実がわかった球審は笑いだし、疑われた大谷選手も笑顔で返しました。
米スポーツ専門誌『スポーツ・イラストレイテッド』が
「オオタニは、不正投球を疑った審判を完全に控えめな態度にさせた。
審判は即座に笑い出し、彼が思っていた疑惑は正しくなかったことに気が付いたようだった」
と大谷選手の紳士的な振る舞いを描写。
全国紙『USAトゥデイ』のスポーツサイト『フォー・ザ・ウィン』も
「オオタニは審判を笑顔にさせることができる稀少な選手だ」
と大谷選手の神対応を絶賛しました。
「微妙なプレーのとき、もう少し冷静にいられるかどうかっていうのは、なにも野球だけではないですけど、日々そういう精神状態がつくれるようになれば、もっともっといいんじゃないかなと思ってます」
と語る大谷選手。
紳士的な振る舞いを続けることで、人種を超え、敵味方を超え、誰しもに愛される存在となってきたのです。
そしてそれは、実力のある大谷選手にとって間違いなく有利に働くに違いありません。
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