MLBは今季からレギュラーシーズンの日程を大幅に変更。

同地区球団との試合が減った一方で、インターリーグ(交流戦)の試合数が倍以上になりました。

米スポーツ専門メディア『ジ・アスレチック』が

「この変更の背景には、オオタニ人気がある」

と説明していた通り、対戦球団が主催するゲームでも、そのプレーを一目見ようと、多くのファンがスタジアムに足を運んでいます。

敵味方、老若男女関係なく誰しもが、フィールドで躍動するユニコーンの虜となっているのです。


◆異例の“リスペクト” 総立ちとブーイング…敵地で起きた「異様な光景」

ロサンゼルス・エンゼルスの大谷翔平選手は、5月15日、敵地で行われたボルチモア・オリオールズ戦において「3番・投手兼DH」で先発出場。

投手として7回を投げ抜き、打者としても4安打5出塁と躍動し、チームの勝利に貢献しました。

一方で、この日の「投手・大谷」は決して調子が良いとは言えませんでした。

1点リードの2回2死一塁からアダム・フレイジャー選手に右越え2ラン。

3-2の3回2死一塁の場面では、アンソニー・サンタンダー選手が、スイーパーをバックスクリーンに運ぶと、
打ち上げられる花火に合わせて、地鳴りのような歓声が球場を包み込みます。

オリオールズの本塁打攻勢の流れを一転させたのは「打者・大谷」でした。

4回、同点の1死一、二塁の場面で大谷選手が振り抜いた打球は一直線に右翼席へ。

打球速度114.6マイル(約184.4キロ)、今季自身最長となる飛距離456フィート(約139メートル)の特大3ランとなりました。

ユニコーンの放った大飛球に、オレンジ色が大半を占めるカムデン・ヤーズ球場のファンも一気に心を奪われ、スタンディングオベーション。

拍手を送る人、カメラで撮影する人、手を回して大騒ぎする人...など様々な反応で、大谷選手の本塁打に酔いしれました。

球場全体を鷲掴みしたこの一打に、『MLB公式サイト』のイアン・クィレン記者も

「オオタニはまたも信じられない夜を披露した」

と伝え

「どこへ行ってもオオタニはファンがかつて見たことのないものを見せる。
この日も球場のセンター後方、オリオールズの放送が『ほとんど打球が届いたことがない』と言った場所へ本塁打を打った。
この本塁打は、このスーパースターの打席での大活躍の一部だった」

と驚きを隠さずに褒め称えました。

素晴らしいプレー、素晴らしい選手の前では敵も味方も関係ありません。

この日大谷選手は、投手としては本来の調子ではありませんでしたが、バットで自らを援護。

第2打席で右前打、第4打席で右中間への三塁打を放ち、自身二度目のサイクル安打に王手をかけます。

先発投手によるサイクル安打は史上初の快挙。

投げて打っての大谷劇場に、スタジアムは異様な雰囲気に包まれていきます。

9回2死、2番マイク・トラウト選手が四球でつないで大谷選手に打席を回すと、敵地ファンも一斉に拍手。

あと二塁打が出れば快挙達成となる最後の打席を固唾をのんで見守ります。

2ストライクと追い込まれ、レフトへ運んだ打球が単打に終わると、スタンドから一斉にブーイングが起きる異常事態。

ベーブ・ルースが生まれたボルチモアで、二刀流に浴びせられた“ブーイング”は、決して批判的なものではなく、「サイクル安打を達成できなかったこと」へのブーイングでした。

敵であるオリオールズファンも、それだけ偉業達成の瞬間を期待していたのです。

大谷選手の存在感や注目度が、敵味方の枠を超えていることを実感できるこのシーン。

エンゼルスの地元放送局『バリースポーツ・ウエスト』が

「ボルティモアのファンだって、サイクルヒットを見たいんだ」

と記して動画を公式ツイッターで投稿すると、ファンからは「もう敵味方関係なくなってるし!」「歴史的瞬間だもんね。そりゃ見たいよね」などと続々と反応が寄せられました。

相手ファンからも注がれるリスペクト。メジャーリーグで大谷選手が築いてきたものを感じさせる瞬間となりました。


◆カージナルスファンも熱狂「ユニホームを着たユニコーン、ショウヘイ・オオタニを体験した」

4年ぶりとなった敵地カージナルスとの3連戦でも、二刀流スターを一目見ようと球場に多くのファンが詰めかけました。

米ミズーリ州地元紙『セントルイス・ポスト・ディスパッチ』が

「カージナルスのファンがユニホームを着たユニコーン、ショウヘイ・オオタニを体験した」

と特集し、実際に見た二刀流の衝撃を伝えました。

同メディアは

「多くのファンがオオタニのユニホームを着たユニコーンと同じ姿で球場に来ていた。
エンゼルスの背番号17や、侍ジャパンの背番号16、中には日本語でオオタニの名前が書かれたものもあった」

と、セントルイスの熱狂ぶりを伝え

「スーパーマンがブルペンでウォームアップしているとき、ファンたちはメットガラのパパラッチのように写真を撮っていた。
何人かのファンは日本語が書かれたボードも持っていた。日出ずる国から来た男は我々の目の前にいた」

と球場内外で見られた二刀流フィーバーに目を丸くしました。

ちなみにメットガラとは、毎年5月にニューヨークで開催されるファッションの祭典。

大谷選手の人気は、もはやスーパーモデルやロックスターに匹敵するレベルなのです。

侍ジャパンでチームメートだったラーズ・ヌートバー選手との対戦でも注目された5月3日の試合でも、勝ち星こそつきませんでしたが、投げては5回13奪三振、打っては3安打1打点とチームの勝利に貢献。

同メディアは

「私や、多くのセントルイスの人々にとって、最大級のショーを見る初めてのチャンスだった。
オオタニの二刀流だ。一生忘れないスポーツの瞬間だった。
そこには、野球のユニホームを着たユニコーンがいた」

と大谷選手がセントルイスにやって来た価値を強調した上で

「計り知れない経験だった。オオタニは怪物並みの運動計画を持っている。
彼はハーバード大で複数専攻しながらクラスでトップに立つような優秀さで野球のトレーニングと勉強に励んでいる」

と二刀流の凄みをユニークな表現で伝えました。

球団公式SNSも、敵地セントルイスでの二刀流フィーバーぶりに注目しています。

エンゼルス公式インスタグラムは「セントルイスでの試合の時間」と題した一枚の写真を投稿。

その写真には、胸に「JAPAN」の文字が刻まれたピンストライプのユニホームを着た少年が写っています。

帽子を見る限り、カージナルスのファンのようですが、少年が大きく掲げた白いボードには

「SHOHEIさんはサインをお願いします」

と漢字混じりの丁寧な日本語が書かれており、さらに「SHOHEI」の「O」の部分は赤く塗られ、日の丸をほうふつとさせるデザインになっています。

この微笑ましい少年ファンの猛アピールには「平仮名、カタカナ、漢字、全部日本人の私より上手に書けてる。翔平さん、この少年にご褒美あげて!」と様々な反応が続々と寄せられました。


◆「野球界のスーパースターがミルウォーキーにやってきた」スタンド熱狂…いるだけで「ヤバい」

4月28日から始まったミルウォーキー・ブルワーズとの3連戦でも、大谷選手は敵味方に関係なくファンの大きな人気を集めました。

メジャー6年目にして初見参となったブルワーズの本拠地、アメリカン・ファミリー・フィールドには、初戦は2万4787人、2戦目は3万9198人、3戦目は3万3557人と、3日間で9万7542人の大観衆が詰めかけました。

米カリフォルニア地元放送局『バリー・スポーツ・ウエスト』の公式ツイッターが、大谷選手の打席中に生まれた珍光景を動画で投稿。

「均衡スケジュールのおかげでより多くの人がユニコーンを見ることができる」

と紹介された動画の中では、大谷選手が打席に立つだけで一斉にスマートフォンを取り出すファンの姿が。

同局のリポーター、エリカ・ウェストンさんも

「若いミルウォーキーのファンがショウヘイ・オオタニのダグアウト入りを見ながら……『クレイジーだよ!ヤバいー!』と興奮していました。
彼らはユニコーンを見るのが待ちきれないようです」

と、ブルワーズファンの熱狂ぶりを紹介しました。

米オレゴン州のニュース局『KTVZ』は

「彼は日本だけじゃなく、アメリカであってもスーパースターだ。私はオオタニに会えるのが嬉しくて来た」

と遠くミネアポリスから訪れた男性ファンのコメントを紹介。

ちなみにミネアポリスとミルウォーキーの距離は約900km。東京 - 札幌間よりもさらに遠い距離です。

同メディアは

「野球界最大のスーパースターの一人がミルウォーキーにやってきた。そう、オオタニだ。
いまや史上最高の投手であり、史上最高の打者でもある彼を見るために、全米だけじゃなく、日本からもファンが押し寄せている。
ここまでの影響力の大きさは前例がない」

と大谷選手が初めて試合に訪れたミルウォーキーでの活況ぶりを伝えました。

また、ミルウォーキーの地元ラジオ局『WUWM』のチャック・クアーンバック記者は

「オオタニがミルウォーキーでプレーするとき、地元在住の日本人男性は試合を見に行くと言っていた」

と報じ、実際にこの試合を観戦したセイ・モリカワさんのコメントを紹介。

ミルウォーキー郊外ブルックフィールド在住のモリカワさんは

「仕事の関係で1年半ほど前からミルウォーキーで過ごしているブルワーズファンだが、どうしてもスーパースターの大谷選手を見たかった。
大谷選手が花巻東高に在籍し、甲子園で躍動した高校時代から応援しており、日本人は非力だという一般常識を覆したのを誇りに思っている」

と大谷選手目当てで家族、友人ら7人で球場に訪れたことを明かしました。

今や世界的スターとなった大谷選手。

敵地であっても彼の一挙手一投足に誰もが夢中になっているのです。


◆高弾道ムーンジョットに敵地ファンも最敬礼「心は通じた」

ブルワーズとの3連戦では、高さ約50メートルのムーンショット弾で、敵地のファンの度肝を抜きました。

4月30日、「3番・DH」で出場した第2打席。

相手先発右腕コリン・レイ投手のカットボールをかちあげると、打球は打球角度39度、162フィート(約49.4メートル)、滞空時間6.98秒の高弾道ホームランとなりました。

この驚愕の一打に球場も騒然。敵地ファンも大谷選手のプレーにリスペクトを送りました。

エンゼルス公式ツイッターが一塁側グラウンドレベルから撮影した動画では、ダイヤモンドを一周してベンチに帰ってきた大谷選手を、拍手で迎える年配のブルワーズファンの姿が写っています。

さらにこの男性は、二刀流に敬意を示すかのように、頭を下げ、両腕を仰ぐような仕草を見せたあと、兜を被った大谷選手に再び拍手を送りました。

敵地ファンの披露した最敬礼には、日本人ファンも即座に反応。
「本当に本当に素晴らしいです!気持ちは通じました」と感激の声が上がっていました。


多士済々のメジャーリーグにあっても図抜けたスター性を放つ大谷翔平選手。

唯一無二の二刀流の行くところに話題がない日はありません。

その凄まじいまでの異能ぶりに、敵味方関係なく、誰もが虜になってしまうのです。



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