今季から導入された「ピッチクロック」や「守備シフトの制限」、「牽制球の制限」など、MLBは野球というスポーツの発展を目指し、数々のルール改変を行ってきました。

2022年から採用された「大谷ルール」も、そういった試みの一つです。

この「大谷ルール」によって、投打において高い能力を持つ二刀流のスーパースター・大谷翔平が誕生したのです。

その一方で、球界の顔とも言える大谷選手の二刀流プレーに待ったをかける恐ろしいルールが生まれようとしています。

MLBは今季、提携する米独立リーグ「アトランティック・リーグ」内において、新たなルールを導入することを発表しました。

導入された3つのルールの中で、大谷選手ファンが、絶対に見過ごせないのが「ダブルフック・ルール」です。

ダブルフック・ルールとは「先発投手が5イニングを投げきらない場合、打順からDHが消滅する」というもの。

もしこれがMLBで導入されると、大谷選手の打席数は大幅に減ることになってしまいます。

野球人気復活の起爆剤とも言える二刀流スターの活躍の場を奪いかねないこのルール改変。

これには現地の識者からも批判の声が上がっています。


◆先発投手降板でDHが消滅?「ダブルフック・ルール」とは?

これまでもMLBは、AAAやAAなどのマイナーリーグにおいて、数々の新ルールを施行してきました。

そして、いくつかのルールが実際にMLBでも導入されています。

投球間隔や打者がバッターボックスに入るまでの秒数を制限する「ピッチクロック」や、極端な守備シフトの制限、牽制球の制限、ベースサイズの拡大といった今季から導入された新ルールも、数年前からマイナーリーグで試験的に採用されていたものです。

また、MLBはマイナーリーグ以外に、独立リーグともパートナーシップを結び、様々なルールを試しています。

今回話題となった「ダブルフック・ルール」は、米独立リーグのアトランティック・リーグにおいて、2021年から試験導入されてきたものです。

アトランティック・リーグは、1998年に設立された独立リーグ。

2019年からMLBと新ルールのテストをするための業務提携を結び、翌年にはMLBのパートナーリーグにも認定されました。

これまでアトランティック・リーグで施行された新ルールには

・ロボットによるボール・ストライク自動判定「ABS」
・全てのカウントにおいて振り逃げが可能「一塁盗塁」
・投手プレートを1フィート(約30cm)後ろに下げる

といったものがありました。

4月18日、MLB機構はアトランティック・リーグにおいて

「現在MLBでも採用されている牽制球の制限を2球から1球に削減」

「先発していない選手の代走を常時認め、ベース上で交代させられた選手はその後も出場可能となる(指名代走)」

の2つの新ルールを加えると発表。

さらに、2021年から採用されていたダブルフック・ルールを一部改変し

「先発投手が5イニングを投げきらない場合、打順からDHが消滅する」

としました。

つまり、先発投手が5回もたずに降板すると、DH制度が全面解除され、それ以降はリリーフ投手が打席に立つか、代打を使うことになります。

このダブルフック・ルールが採用されると、打撃専門の指名打者、そして二刀流で異彩を放つ大谷選手の起用法に、もろに影響を及ぼすのは避けられません。

例えば、大谷選手が「投手兼DH」で先発出場した際に、何らかのアクシデントで4回にマウンドを降りてしまうと、DHとしての出場ができなくなっていまいます。

さらに大谷選手以外の先発投手が5回未満で降板した場合も、指名打者として出場していた大谷選手はベンチに下がらなくてはいけません。

このルールには、現地識者からも反発の声が上がっており、米スポーツ専門局『Fox Sports』のリポーターを務めるテラン・ジョンソン氏は

「野球を運営する人間たちが、実は野球が嫌いって言うのは最悪だ」

と皮肉交じりに強調。

また、日頃から歯に衣着せぬ物言いで人気を博している米メディア『Barstool Sports』のジャレッド・カラビス記者は

「いまのMLBはピッチクロックや、シフトの禁止などに対する思いのほかの反応の良さに酔っている。
だからクソみたいなルールの修正を図ろうとしているんだ。このアイデアは本当に最悪だ」

と、バッサリ切り捨てました。

元プロ野球選手で野球解説者の高木豊氏も、自身の公式YouTubeチャンネルの中で

「大谷には絶対不利だよね。ほかのチームもDH専門の人がいて、打席を剥奪されるというのは納得いかないと思うよ」

と新ルールの問題点を指摘。

「これが導入されたら、大谷は明らかに打席数が減る。だって5回もたずに降りるピッチャーって結構いるし...絶対やっちゃダメだよ。やったら俺もう、怒っちゃう。たぶん泣いちゃうと思う。涙の抗議だよ…」

と反対の姿勢を示しました。


◆野球ファンからも反対する声が続出

今や野球界の顔と言っても過言ではない大谷選手に、間違いなく悪影響を及ぼすこのルールには、日米のファンからも多くの悲鳴が上がっています。

ネット上では

「メジャーリーグでトップのスター選手を潰すのがMLBの戦略なの?」
「これが導入されてしまったら大谷の規定投球回と規定打席のどっちかは無理になる」
「コミッショナーは彼の活躍でMLBが一定の人気を得ているのがわかってないのかな?」
「MLBは大谷を見たくて他の球場でも観客が増えてるのだから、大谷が出られなくなる制度が通るわけないですよね?」
「大谷選手だけじゃなく、選手が誰一人幸せにならないルール。逆にこんな害悪ルール思いつくほうが難しい」

など大谷選手への影響を懸念する声や

「ダブルフック・ルールは馬鹿げている。どこからこんな発想が出てくるんだろう」
「MLB機構がどちらを向いてこのルールを作ろうとしているか全く理解できない」
「先発がノックアウトされたビハインドの状況下で追いつかなきゃいけないのに、打線の核のDHを失わなきゃいけないのヤバすぎる」
「これ大谷だけじゃなくてDHの選手全員に悪影響だよなあ…もし導入したらDHに強打者を入れられなくなるね」
「明らかに捨て試合みたいなのが急増して、ますます野球人気なくなるんじゃ...」

といった批判的な意見が多く寄せられました。

また、ごく一部ではありますが

「ダブルフックDHは、私たちが失っていた戦略性をゲームに取り戻してくれる」
「私はDH制が嫌いで禁止すべきだと思うので、ダブルフックルールを支持する」

といった、このルールを肯定するコメントや

「こうなったら彼は外野で出るよ。大谷だもの」

と“三刀流”を期待する声も見られました。

たしかに大谷選手なら降板後に外野手として出場しかねませんが、そうなると今まで以上に疲労や故障によるリスクが出てきます。

一体MLB機構とそのコミッショナーであるロブ・マンフレッド氏は、どういう思惑で、こんなルールを導入しようとしているのでしょうか?


◆ダブル・フックルールは誰のため?MLBの思惑

元々このダブルフック・ルールは、まだナ・リーグにDH制度が導入されていなかった2021年に、その折衷案としてアトランティック・リーグで試験導入された経緯があります。

当初は「5回降板」という縛りもなく、先発投手が降板した瞬間に打順からDHが消滅するという、今回のものよりさらに厳しいものでした。

MLB機構は、この新ルール導入の目的について

「2020年シーズンに関して、先発投手のほぼ90%が7イニング未満で交代している。
先発投手とDHをリンクさせることで、先発投手の価値を高め、より長いイニングを投げられるようにすることで、終盤の戦術面での多様化に繋がる」

と説明しています。

近年の野球では、先発投手が早めに引っ込み、途中からブルペン投手が次々に交代していく展開が多く、一部のファンからは「ブルペン投手が強力すぎて逆転を期待できない」といった問題点が指摘されていました。

MLB機構は、先発投手が長い回を投げる伝統的なスタイルに回帰しようとしているのです。

一方で

「この新ルール導入で、最近MLBで頻繁に採用されるようになったオープナーやブルペンデーが使いにくくなるだろう」

と懸念する声も上がっています。

「ナ・リーグでも2022年シーズンからDH制が採用されたので、折衷案として生まれたダブルフック・ルールはもはや必要ないんじゃないか?」

といった意見もある中で、今回「5回もたなかったら」という制限を加えてまで、再検証に入ったということは、MLB側もダブルフック・ルールに一定の手応えを感じているようです。

ピッチクロックなどの新ルールも、数年の試験期間で採用されたことを考えると、来年や再来年、このダブルフック・ルールがあっさり導入される可能性は否定できません。


◆MLBの人気はNFLの三分の一?野球人気復活の鍵は「時間短縮」

MLBの動員数は2012年シーズンをピークに、9シーズン連続で下降線を辿っており、北米4大プロスポーツと呼ばれる、アメリカンフットボールのNFLや、バスケットボールのNBA、アイスホッケーのNHLに、その人気を奪われつつあります。

実際に、2021年の『ワシントン・ポスト』紙による調査では、アメリカの成人に好きなスポーツを質問したところ、野球をあげたのはわずか11%という結果でした。

1位のアメフト(34%)に大きく水をあけられ、バスケと同率の2位に甘んじています。

アメリカの代表的なスポーツであったはずの野球が、今や窮地に立たされているのです。

野球人気凋落の原因の一つと言われているのが「試合時間の長さ」です。

3月に行われたWBCでは、試合時間が4時間を超えることも多く、普段野球を観ない人たちを中心に、「試合が長すぎる」といったコメントがSNS上に寄せられていました。

一方で野球を除くNFL、NBA、NHLは3時間以内で試合が終わることがほとんどで、観客のスタジアム滞在時間は平均で2時間半程度とも言われています。

この試合時間の差が、人気凋落の大きな原因となっているとMLB機構は考えているのです。

申告敬遠、ワンポイントリリーフの禁止、延長タイブレーク制度、
ピッチクロック、守備シフト制限、牽制球制限...

これらの新ルールは、試合時間の短縮を目的として作られたと言って良いでしょう。

ダブルフック・ルールも、先発投手に長い回を投げさせることで、投手交代の回数が減り、試合時間が短縮されるという一面を持っています。


◆新ルール「指名代走」で野球が変わる?ファンは拒絶反応

野球はアメリカンフットボールやバスケットボールと違って、選手同士の身体的なコンタクトの少ない競技です。

また、走者一掃のツーベースヒットなど、戦略的に重要な攻撃の瞬間は限られており、視覚的興奮の面でも他競技よりも不利になっています。

そういった面を改善しようと、今回ダブルフック・ルールとともに、アトランティック・リーグで導入されたのが「指名代走」です。

「指名代走」とは、先発メンバー以外の選手が指名され、自由なタイミングで塁に出た走者と交代することができ、交代後も元の走者、指名代走とも再出場ができるというもの。

例えば、シンシナティ・レッズなどで通算324盗塁をあげたビリー・ハミルトン選手や、ニューヨーク・メッツ所属の代走の切り札テレンス・ゴア選手といった、高い盗塁技術を持った俊足の選手を起用すれば、得点のチャンスが高まります。

言い換えれば、「打力がネックでメジャーに定着できていない選手」でも、足が速いだけで活躍できるようになるということです。

ソフトバンク・ホークスの周東佑京選手や、ヤクルト・スワローズの並木秀尊選手の獲得に乗り出すメジャー球団があらわれるかもしれませんね。

さらにアトランティック・リーグでは、今季からMLBで導入された牽制球も2球から1球に制限。

走者はより大胆なリードや、果敢なスタートを切ることができるようになり、これまでとは比較にならないくらい盗塁が増えることが予想されます。

MLB機構は、試合時間の短縮とともに、盗塁というスピーディーなプレーを数多く作り出すことで、観客の視覚的興奮を高めようと画策しているのです。

しかし、この「指名代走」ルールに対しては否定的な意見が多く「野球の根幹を揺るがす。誰も望んでいない、本当に悪いアイデアだ」といった拒絶反応を示すファンや、「盗塁記録だけじゃなく、打点や防御率、様々な指標に影響を及ぼして、めちゃくちゃにしてしまうルールになる」などの従来のルールを尊重する意見が寄せられました。

さらに、現地の識者からも

「キャッチボールもできないし、バットも振れないのに、メジャーリーガーになれる。
たった一つのことだけができてメジャーリーグにいられるなんて、メジャーリーグの本質ではない。
メジャーリーガーになることは難しくあるべきだ」

「打てるのに足の遅い選手と、打てないけど足の速い選手を交代させることを選択しても、監督の戦術に何の影響も与えない。
これじゃまるでリトルリーグだ」

「ピッチクロックにはプラスの面もあったと思うけど、指名代走にはその余地が微塵もない。馬鹿げているとしか言いようがない」

と強烈に批判されています。


確かにピッチクロックなどによる試合時間の短縮や、牽制球制限などによる盗塁数の増加は、新しい野球ファンを取り込むのに、プラスの面もあるでしょう。

しかし、指名打者の活躍の場を奪い、先発投手の負担も増える「ダブルフック・ルール」と、足の速いだけの選手を優遇しすぎる「指名代走」は、正直やりすぎじゃないか?と感じます。



大谷2023総集編

大谷本や大谷グッズ!アマゾンで「大谷翔平」を検索する






DMM TV 30日間無料体験