今季も規格外の投打二刀流プレーを披露してくれたロサンゼルス・エンゼルスの大谷翔平選手。

WBC世界一の余韻もそのままに、中5日で登板しながら順調に勝ち星を積み重ね、8月9日には10勝に到達しました。

しかし8月23日に肘靭帯の損傷が発覚。2年連続となる規定投球回には届きませんでした。

とはいえチームトップとなる10勝を上げ、防御率3.14、167奪三振、WHIP1.06、被打率.184と圧巻の成績をマーク。

史上初となる2年連続での「二桁勝利&二桁本塁打」に加え、前人未到の「10勝40本塁打」も達成しました。

今回は、「投手・大谷」にフォーカスを当て、今季のベストピッチをご紹介いたします。


◆最速162キロで6回10K無失点!躍動を予感させる開幕戦

2023ベストピッチの1つ目は、現地3月30日、敵地アスレチックス戦において「3番・投手兼DH」で先発出場した開幕戦。

初回先頭打者を歩かせますが、後続を3人で仕留めると、2、3回を三者凡退に斬って取ります。

特に3回一死で迎えたラモン・ラウレアーノ選手を空振り三振に討ち取った球速85マイル(約137キロ)のスイーパーの切れは凄まじく、投球分析家のロブ・フリードマン氏も実際の映像とともに

「フリスビーみたいなスイーパー。22インチ(約56センチ)の横変化」

と物理法則に反する魔球の変化量を絶賛。

米スポーツメディア『スポーティング・ニュース』公式ツイッターも

「ショウヘイ・オオタニは魔法使いだ。エグい!」

と驚きをもって投稿しましたた。

4回には一死2、3塁のピンチを招いたものの、最速100.7マイル(約162キロ)の速球で二者連続空振り三振。

ギアを上げてピンチを脱した大谷選手は、マウンド上で雄叫びを上げました。

5、6回も走者を背負うものの無失点で切り抜け、勝利投手の権利を持って降板。

6回93球を投げて、10奪三振、被安打2、無失点と支配的な投球を披露しました。

残念ながら救援陣が崩れ1−2の逆転負けを喫してしまいましたが、打者としても第2打席に安打を放ち、順調な仕上がり振りをアピール。

今季の大活躍を予感させる開幕マウンドとなりました。


◆「いまのショウヘイは誰にも打てない」縦横緩急で相手打線を翻弄

続いてご紹介するのは、現地4月21日に行われた本拠地ロイヤルズ戦。

前回のレッドソックス戦が雨で途中降板となったため、中3日での登板となった大谷選手は、「2番・投手兼DH」で先発出場。

7回11奪三振、被安打2、無失点の快投で3勝目を挙げました。

初回MJ・メレンデス選手に対して、カウント1-2からの5球目のスイーパーは大きく曲がって内角低めへ。

体勢を崩されながらスイングするも、メレンデス選手のバットは空を切りました。

投球分析家ロブ・フリードマン氏が

「素晴らしい86マイル(約138.4キロ)のスイーパー」

と綴って動画をツイッターで公開すると、ファンからも絶賛コメントが寄せられました。

初回を3者連続三振に斬って取る素晴らしいスタート。

2回以降も最速161キロの速球に加え、今季のウイニングショットになっているスイーパーを織り交ぜ、相手打線を沈黙させました。

極め付きは6回からの2イニング。

先頭打者に四球を与えましたが、その後3者連続三振に斬って取ると、続く7回も3者連続三振。

なんと6者連続三振で、この日11個目の三振を奪うと、エンゼル・スタジアムの観客はスタンディングオベーションで「投手・大谷」を称えました。

この日、スイーパーと並んで効果的だったのが、平均落差62インチ(約157.5センチ)の大きく縦に割れるカーブです。

この日の全102球のうちカーブは9球と割合は多くないですが、その威力は抜群。

元巨人の山口俊氏が

「3階から落ちてきているような感じでしょうね。出どころが2階、3階っていう感じ」

と評するように、この日投じたカーブは平均64インチ(約162.6センチ)、最大落差は76インチ(約193センチ)と、常識外の落差。

6回二死走者なしの場面では、MJ・メレンデス選手を1−2と追い込むと、最後は大きく縦に割れる114キロのカーブを投じます。

タイミングを完全に外されたメレンデス選手は空振りし膝をつきました。

投球分析家のロブ・フリードマン氏が

「73インチのドロップで時速71マイルのカーブボールを楽しんでいます。アメージング」

とコメントを添えて動画を投稿すると、ファンからは驚愕のコメントが寄せられました。

大谷選手は、今季ここまで5度の登板において、許した失点はわずかに2点。

防御率0.64、38奪三振、被打率.092と、対戦相手を完璧にねじふせています。

その被打率や被安打数は、シーズン最初の5回の先発登板において、MLB最小記録を更新。

投げるたびに歴史の扉をこじ開ける「投手・大谷」に対して、「圧倒的な投球」「奇跡的な活躍」と米メディアもこぞって称賛の声を上げました。

この日、完全に抑え込まれたロイヤルズのマット・クアトラーロ監督は試合後

「オオタニはスペシャルだ。グラウンドに出てくる日はほとんどいつでもね」

と称賛。続けて

「彼は初回から3者連続三振を奪った。
私たちの打撃はそこからの4イニングほどで良くなっていったと思うが、彼は最後まで踏ん張った。
まだ見ていなかったカーブを導入し、私たちのバランスを崩した」

と要所で冴えを見せたカーブを褒め称え、話題のスイーパーについても

「素晴らしい球だ。彼はやろうと思ったことはなんでもできる人に見える。
よく投げていることは知っていたから、準備はできていた。
ただ、生で見ると新しい球だ。彼は本当に数多くの武器を持っている」

と振り返りました。

エンゼルスのフィル・ネビン監督も

「ショウヘイ・オオタニの初回は、今シーズン見たなかでも本当に圧倒的だった」

と手放しで激賞。

さらに6者連続三振に仕留めたシーンに着目し

「カーブはショウヘイのもう一つの武器であり、それほど頻繁に使う球ではないかもしれない。でも、使った時はとても効果的な球となるんだ」

と秘密兵器の切れ味に賛辞を贈りました。

最後に同監督は

「まさに完璧なパフォーマンスだった。いまのショウヘイは誰にも打てない。対戦しなくて良いことは幸運だと思った」

と緩急を使った配球で三振の山を築いた大谷選手のピッチングを改めて絶賛しました。


◆ドジャースとの初対戦で見せた魂の101球

続いてご紹介するのは、名門相手に球団記録となる12三振を奪った現地6月21日の本拠地ドジャース戦。

これまでのスイーパー主体の投球から打って変わって、フォーシームやカッターなどの速球主体のパワーピッチングを披露。

大谷選手がドジャース相手に先発登板するのは6年のメジャー生活で初めてのことです。

101球中49球と今季最多となる割合で投じられた速球は、最速100.3マイル(約161キロ)をマークしました。

味方打線がドジャースの投手陣の前に沈黙し、3敗目を喫したものの、7回12奪三振1失点と力投し、見るものを唸らせました。

この時点で大谷選手はメジャー3位の三振を奪っており、米スポーツ専門メディア『ジ・アスレチック』の元記者ブレント・マグワイア氏は

「同じ男が24本塁打でメジャートップに立っている。本当に途方もない」

と投打二刀流での活躍を再認識。

現地メディアからも、「圧倒的なピッチング」「クレイジー」「衝撃的」と称賛の声が相次ぎました。

ドジャースのデーブ・ロバーツ監督は試合後

「今夜の私はファンのような気持ちで彼の投球を見ていた。100マイルの球を投げ、我々の打線を圧倒していた」

と感嘆の声を漏らしました。

その表情は、敵軍の将とは思えないほどに目尻は下がり、頬も緩みっぱなし。

「彼の我々の打線に対する攻めが私は大好きだ。監督としての立場を第一に考えないといけないことはわかっている。だが……彼を称賛せずにはいられないんだ」

と、強打者ひしめくドジャース打線に真っ向勝負を挑んだこの日のピッチングを絶賛しました。


◆HRキングのライバルをきりきり舞い!投打で八面六臂の活躍

続いて紹介するのは、今季の大谷選手のベストゲームの一つにも挙げられる、現地6月27日のホワイトソックス戦です。

この試合では、2本塁打を含む3安打猛打賞を披露した「打者・大谷」に注目が集まりがちですが、ピッチングも素晴らしい内容でした。

初回、二死走者なしの場面。

ア・リーグ本塁打王争いのライバルであるルイス・ロベルトJr.選手をカウント1-2と追い込むと、最後の決め球はスプリット。

外角のストライクゾーンから急速落下した伝家の宝刀に、ロベルトjr.選手のバットはかすりもせず。

前日にも本塁打を放っていた強打者を空振り三振に斬って取りました。

ピッチング・ニンジャこと、米投球分析家ロブ・フリードマン氏が

「ショウヘイ・オオタニ、獰猛な88マイルのスプリット」

と綴って動画を公開すると、ファンからも変化球の切れ味の鋭さを絶賛するコメントが寄せられました。

1回裏に自らを援護する本塁打を放つと、この後のマウンドでも躍動。

2回1死三塁のピンチを2者連続三振で切り抜けると、3回、4回、5回と二塁を踏ませぬ投球で、相手打線を完全に封じ込めます。

6回には1死一、二塁のピンチを招きますが、ここでもギアを上げ、ティム・アンダーソン選手を見逃しの三振。

さらに続く、ロベルトJr.選手も空振り三振に斬ってとりました。

この日はスプリットとカットボールを主体に、100マイル近いフォーシームやスイーパーを効果的に折り込みながら相手打線を圧倒。

快調なペースでスコアボードにゼロを並べていきます。

7回一死1、2塁としたところで、爪の異変で降板となりましたが、6回1/3、102球を投げ、10奪三振4安打1失点と、今季10度目のクオリティスタート。

スタジアムのファンもスタンディングオベーションで、エースの力投を労いました。

降板した直後の7回裏には、この日2本目となる28号を放ち、自身初となるリアル二刀流でのマルチ本塁打をマーク。

投げては10奪三振、打っては2本塁打。
リアル二刀流での八面六臂の活躍を果たした二刀流のユニコーンに、各方面から早くもMVP確定の声が上がりました。

この日、マスクを被ったチャド・ウォラック捕手は試合後

「なんというか、どういうわけか試合がどんどんクレイジーになっているような気がする。あんな投球をして、1試合2発なんて。毎回、彼には驚かされる」

と大谷選手が投打に躍動した伝説のゲームを振り返りました。

二刀流スターが披露した“離れ業”には敵軍も脱帽。

ここまで17本塁打を放ってブレイク中のスラッガー、ジェイク・バーガー選手は

「100球投げて降板したと思ったら、また(2本目の)本塁打を打っちゃうんだから。マジで信じられないよ。自分の目でその活躍を見ると、彼のやっていることは途方もないよね」

と、もはや別次元レベルの大谷選手の躍動に驚きのコメント。

この日「投手・大谷」の前に、ノーヒットに抑えられていたバーガー選手でしたが

「(三振に取られた)スイーパーもフォーシームも凄い威力だった。彼は本当に素晴らしい投手だ。来年再び対戦する機会があるといいね」

と二刀流との真剣勝負を楽しんだことを明かし、最後に

「正直、僕たちにとってはストレスが溜まる試合が続いているけど、今日は良い時間を過ごせたと思う」

と敗れながらも、歴史的な試合の証人となれたことを誇らしげに語りました。


◆「僕が試合を終わらせる」無双のマウンドで初完投&完封

2023シーズンのベストピッチは、見るものすべてを虜にした「伝説のダブルヘッダー」の第1試合、7月27日のタイガース戦。

「2番・投手兼DH」で投打二刀流出場した大谷選手は、無双とも言える圧巻のマウンドさばきを見せつけます。

初回1死、ライリー・グリーン選手から内角高めの速球で空振りを奪い、この日最初の三振とすると、2回2死からはハビアー・バエズ選手をスライダーで空振り三振に仕留めるなど、快調な立ち上がり。

4回まで打者12人に対し一人の出塁も許さぬパーフェクトピッチングで相手打線を沈黙させました。

その後5回先頭の4番ケリー・カーペンター選手に安打を許したものの、併殺で切り抜けると、
6回、7回、8回とゼロを並べ続け、9回もマウンドへ。

最終回も三者凡退に打ち取り、自身メジャー初となる完投&完封で今季9勝目をあげました。

打者29人に対して111球を投じ、8奪三振、許した安打はわずか1本。

もしも5回のカーペンター選手のヒットがなければノーヒットノーランという完璧な内容でした。

大谷選手が試合後のインタビューで

「ストレートも良かったですし、序盤のコマンドがまず良かったのかなと思うので、リズムに乗りやすかった」

と語った通り、この日はコーナーを突くコントロールが抜群。

力のあるフォーシームを主体に、スライダー、スプリット、カーブ、カットボールと全ての球種をゾーンギリギリに投げ分け、タイガース打線を圧倒。

球数からも分かる通り、要所では効果的に併殺を奪うなど、支配的な投球を見せつけました。

投球分析家のロブ・フリードマン氏も

「ショウヘイはまるでストライクゾーンのラインが見えるようだ」

と見事な制球力を称賛。

同氏が投稿したダイジェスト動画には、内外角、高め低めとゾーンギリギリをピンポイントに決めるシーンが66秒間に渡って収められており、コメント欄も「投手・大谷」を絶賛する声で賑わいを見せました。

試合後、40分もすれば次の試合が始まるにも関わらず、恒例となった囲み取材に応じた大谷選手は

「ダブルヘッターの1戦目だったので、チーム的にも良かったかなと。個人的にももちろん良かったです」

と笑顔を見せ、メジャー初完投&完封を満足気に語りました。

そしてその直後に始まったダブルヘッダー第2試合で、球史に残る2打席連続本塁打を放ったのです。

ダブルヘッダーの1試合目を一人で投げぬいて、その次の試合で本塁打を、それも2本も放ったのは、メジャー史上だれも成し遂げたことがありません。

まさに異次元と言える活躍に、現地メディアからも喝采の嵐が巻き起こりました。

米メディア『MLB公式サイト』が

「ウソでしょ、オオタニ!ショウヘイがワイルドなダブルヘッダーで1安打投球をし、2本塁打を放つ」

と率直な驚きを見出しに取って、この伝説の一日をレポート。

「エンゼルスの二刀流のスーパースターが木曜日、また驚嘆させた。
ショウヘイ・オオタニは6年のメジャーリーグのキャリアで数多くのことを証明してきた。
もし彼にできないことがあるとあなたが思っているなら、それはおそらく間違っている」

と美辞麗句を並べ立て、この偉業を称えました。

この他にも

「我々はみな歴史的瞬間の目撃者だ」
「最も偉大なるショー」
「こんなの誰が信じられる?アンリアルだ!」
「ショウヘイはたった1日で週間MVPの栄誉を手に入れたのか?」
「伝説のダブルヘッダー。MLBの歴史に名を刻んだ」

とスポーツ界の話題を独占。

球界屈指の智将として知られるタイガースのAJ・ヒンチ監督は

「1試合目から支配的で、あの段階でほぼ限界に近いはずだった。
なのに2試合目も出てきて怪物級のホームランを打ったんだ。
オオタニは2試合ともフィールドで最高の選手だった。我々は最高のプレーを見ることができたんだ」

と脱帽。

報道陣から受けた「オオタニは投手と打者のどちらが凄いか?」との質問にも

「それを選ぶ必要はなんかない。オオタニはどちらもベストなんだからね。
実際に今日の彼はそれを見せてくれたじゃないか!
彼はどんな不可能も可能にしてしまうんだ。それぐらいにずば抜けている。我々は世代を超えた才能と戦ったんだ」

と感嘆の声を漏らしました。

エンゼルスのフィル・ネビン監督も

「かつてこんなものは見たことがない、それは確かだ。どのレベルであっても見たことがない」

と驚嘆。

9回のマウンドに送り出したことについては

「8回に様子を伺いに行ったら、ショウヘイが『僕が試合を終わらせる』と言ってきた」

と明かし、苦しい台所事情を救うエースの頼もしさを誇らしげに語りました。


この他にも、粘りの投球で10勝目を上げた8月9日のジャイアンツ戦、
今季最多13奪三振をあげた5月3日のカージナルス戦など、今季も大谷選手はマウンドに登るたびに、素晴らしい投球を見せてくれました。

そしてシーズン中ではありませんが、今季を語る上で、どうしても外すことの出来ないのが、WBC決勝での「泥だらけのストッパー」登板。

9回1点差二死走者なしの場面。
対するはアメリカの象徴にして主将、そしてエンゼルスの盟友マイク・トラウト選手。

ギアを上げた大谷選手は、160キロ超えのストレートを連発。

フルカウントからの6球目に投じた渾身のスイーパーに、トラウト選手のバットは空を切りました。

盟友トラウト選手との頂上決戦を空振り三振で制すと、大谷選手はグローブとキャップを投げ捨てて喜びを爆発。

日本の誇る二刀流スターが、日本に3度目の世界制覇をもたらしました。

シーズン終了後、トラウト選手はこの対決を振り返り

「ショウヘイがクローザーを務めるかもしれないことも、僕が9回に打席に立つ可能性があることも分かっていた。
野球というのは面白いもので、2人の対決でゲームが終わるのも運命だった」

と試合中、対決を予期していたことを明かし

「(決勝戦を三振で終えるのは)僕にとってうれしい結果ではなかったが、あの対決は誰もが楽しみにしていた。
いつかまた、ショウヘイとWBCで対決する日が来るかもしれないね」

と世界一を決める大一番で見せた大谷選手のピッチングを絶賛し、再戦に思いを馳せました。

世界最高の野球選手を目指し、日々研究と努力を怠らない大谷翔平選手。

日本人初となる本塁打王の栄誉に輝いたバッティングはもちろんのこと、ピッチングもこれまでにない進化を遂げていました。

肘靭帯の治療を行い、大谷選手がメジャーのマウンドに立つのは2025年シーズンまでお預けとなります。

しかし周囲の期待を大きく上回ってきた大谷選手なら、きっとこれまで以上の投球を見せてくれるに違いありません。



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