日本代表の大谷翔平選手は、3月16日に行われたWBC準々決勝に「3番・投手」で投打同時出場。

最速164キロで5回途中5奪三振4安打2失点と熱投を演じ、バットでは普段見られないクレバーなプレイで先制劇を呼び込むなど投打で活躍。

世界一奪還を目指す「侍ジャパン」を、見事5大会連続のベスト4へ導きました。

野球の魅力がギュッと詰まった大谷選手のプレーに、日米の識者も大絶賛。

さらに試合前、試合後に見せた大谷選手のスポーツマンシップあふれる行動に感動するファンが続出しました。


◆「バット振る前にボールはミットの中」ドーム騒然の164キロ爆速球

「1人1人いきたい、1人1人抑えたい。ダルビッシュさんをはじめ他の投手、素晴らしい投手が控えていたので。いけるところまでいければいい」

と語っていたように、大谷選手は初回からエンジン全開。

速球、スライダー、スプリットを駆使し、1安打を許すも無失点に。静寂に包まれた東京ドームは一球ごとに大谷選手の雄叫びが響きわたりました。

つづく2回、先頭のパスカンティーノ選手へ投じた6球目は、外角いっぱいに突き刺さる剛速球。

そのあまりの球威に、パスカンティーノ選手も完全に振り遅れて空振り三振。

大型ビジョンに球速164キロが表示されると、場内はどよめきに包まれました。

NPB最終年にクライマックスシリーズで自己最速165キロを記録して以来、MLB5年間でも計測されていなかった102マイルの超豪速球に、米メディアも続々と反応。

『MLB公式サイト』のサラ・ラングス記者は

「102.0マイルは、オオタニがMLBで投げたどの球よりも速い」

と注目。

データ分析会社『コーディファイ・ベースボール』も

「昨シーズンMLBで先発投手が空振りを奪った球の中で、オオタニが投じた102マイルより速いボールは2つしかなかった」

とデータを交えて強調。

エンゼルスの地元放送局『バリースポーツ・ウエスト』の名物解説マーク・グビザ氏は

「ユニコーンが火の玉を投げている!」

と自身のツイッターに投稿しました。

また、スポーツアナリストのベン・バーランダー氏がホストを務めるポッドキャスト番組『フリッピン・バッツ・ポッドキャスト』公式ツイッターも

「とてもクール:ショウヘイ・オオタニの投球ごとに東京ドームがほぼ完全な静寂に包まれる」

とテキストを添えて、二刀流スターの雄叫びの映像を公開。

これには米ファンからも

「これこそ、早起きして見る価値がある理由だ」

とのコメントも寄せられ、日本のファンからも

「銃弾を投げているみたい」
「強く美しい真っ直ぐだった」
「打者がスイングし始める前に、ボールはほとんどミットの中」

と驚きのコメントが寄せられました。

「本当に頭を使って、打席の中で工夫する打者が多いなという印象」と試合後に語っていた大谷選手。

ギアを上げ、熱のこもった投球を見せる一方で、スライダーに狙いを絞るイタリア打線の思惑を外すスプリットを多投するクレバーさも見せました。

5回2死満塁からドミニク・フレッチャー選手に右前2点打を許したところで降板となりましたが、4回2/3で5奪三振3四死球4安打2失点と好投。

野球解説者の新井宏昌氏も

「これまでは、はにかむような笑顔もあったが今日は鬼気迫る表情。これまで見たことない姿だった。
先のことを考えず1イニングごとに全力投球で抑えにかかった。絶対に勝たないといけない投球を見せたことで打線にも相乗効果をもたらした」

と、この日の気迫の投球を称賛。

最速164キロをマークした魂の71球に、栗山監督も試合後

「あまり人前でそういう話をしませんが、今日に関しては多分ファンの皆さんも心にも届いたと思う。
翔平があれだけ1球1球声を出して、なんとかしたいというのが感じられたのかなと。それが全員に伝わりました」

と、気持ちのこもったプレーでチームを鼓舞した大谷選手の姿を大絶賛しました。


◆「野球小僧になった時に彼の素晴らしさが出る」奇襲のセーフティバント

この試合では、大谷選手のまさかの一打が炸裂。試合の均衡を破るきっかけとなりました。

両チーム無得点の3回1死一塁。

好投のカステラーニ投手を引き継いだラソーラ投手の初球に突然体をかがめると、シフトでガラ空きの三塁側へ転がすセーフティバント。

ラソーラ投手の悪送球も誘い、1、3塁とチャンスを広げることに成功します。

SNSでは即座に「大谷のバント」「セーフティ」がトレンド入り。

「まさか大谷がバントやるとは思わんかった」
「大谷さん、164キロ投げるし、セーフティバントするし、相変わらず規格外」
「これが本当の野球だ」

など驚きと称賛のコメントが寄せられました。

誰もが強烈な一打を期待する中での“いい裏切り”は米国でも話題に。

ピッチング・ニンジャの愛称で知られる投球分析家のロブ・フリードマン氏は

「打球初速43.1マイル(約69.4キロ)、打球角度-65度、飛距離5フィート(約1.5メートル)」

と、その特異さを強調してツイート。

『MLB公式サイト』のマイケル・クレア記者も

「ベーブ・ルースでもあのようなバントができなかった」

と驚きを隠せません。

試合後のインタビューで

「極端な守備シフトだったので。理想はもうちょっと強めに、確実に一、二塁を作るバントが良かったんですけど、結果的にそれ以上の一、三塁になったので。狙いとしては良かったんじゃないかなと思います」

と、この時の思惑を明かした大谷選手。

初回先制のチャンスとなった第一打席では、センター前に抜けそうな打球が、イタリアチームの敷いた守備シフトの前にアウトとなっていました。

メジャー屈指のスラッガーの意表を突く奇襲攻撃に、イタリアバッテリーも動揺を隠せず、続く吉田正尚選手の遊ゴロの間に3塁ランナーが生還し1点を先制。

さらに、2死1、2塁の場面で岡本和真選手が3ランを放ち、この回一挙4点と主導権を握るビッグイニングとなりました。

試合後「我々が思ったような展開にならなかった」と試合を振り返ったイタリア代表、マイク・ピアザ監督も

「私はスカウティングレポートや守備コーチを信頼している。バントは驚きでした。オフェンスで貢献しようとしたんでしょう。彼のような打者はアウトにするのが難しい。素晴らしいプレーヤーです」

と引っ張りシフトの裏をかかれた“奇襲”には驚かされた様子。

「日本のような強いチームに8四球を与えては勝てるチャンスはありません。しんどい試合でした」

と白旗を上げました。

2013年WBCで戦略コーチを務めた橋上秀樹氏は

「結果的には大谷選手のバントが大きなポイントになった。大谷選手は大谷シフトを逆手に取った。彼のクレバーさ、柔軟性、視野の広さが出たと思います」

と解説した上で

「大谷選手は二刀流として活躍しているのでピッチャーの心理が分かる。
ピッチャーの心理としては、あそこでバントをやられたら嫌だなということがバッター大谷には分かる。
だからあそこでバントができたと思います。間違いなくサインではないでしょう。
グラウンドにいる誰もがあそこでセーフティバントをするとは思わなかったでしょう」

と「二刀流・大谷」ならではの閃きを大絶賛しました。

野球解説者の新井宏昌氏も相手の意表を突く“小技”に注目。

「大谷選手は頭を使いながら野球というゲームをプレーしている。自分の力を出さないといけないが、勝つためにどうすべきかを分かってプレーできる選手。
ただ、抑える、打ちたい、だけじゃない。チームが勝利することを、いつも思いながらプレーしている」

と豪速球やホームランだけではない、変幻自在のゲームチェンジャーである大谷選手の「野球脳」を褒め称えました。

NPB時代から大谷選手の成長を見守ってきた栗山英樹代表監督も

「ずっと彼を見てきて、翔平らしさが出るときは、実はああいうとき。投げる、打つは別として。絶対勝ちにいくんだと、野球小僧になった時に彼の素晴らしさが出る」

と、ゲームの流れを手繰り寄せたビッグプレーを大絶賛。

試合後のヒーローインタビューで、大谷選手は

「あのシチュエーションも正面でゲッツーになるのが一番最悪のシナリオ。リスクを回避しながら、なおかつハイリターンが望めるチョイスをしたつもり。
結果的に一番いい形、ビッグイニングを作れたのは良かったんじゃないかなと思います」

と振り返り

「日本代表の勝利より優先する自分のプライドはなかった」

と決意を明かし、世界一にかける並々ならぬ執念を語りました。


◆ナイス火消しに頭ポンポン、主砲の復活に喜びを大爆発

大谷選手はマウンドを降りた後も、チームメイトの打席や投球の度に立ち上がって一喜一憂。
この試合では、いつも以上に「勝ちたい気持ち」が爆発する姿が随所で見られました。

2点を失い2点差まで詰め寄られた5回二死1、3塁のピンチで大谷選手の後を受けた伊藤大海投手。

4番・サリバン選手をフルカウントから、最後は外角153キロ直球で遊飛に打ち取りシャットアウト。

日本ハムの後輩・伊藤投手の見事な火消しに、大谷選手は真っ先にベンチを出てお出迎え。

満面の笑顔で伊藤投手の頭をポンポンと撫でながら、最敬礼で褒め称えました。

SNS上では「ナイス火消し」「頭ポンポン」がトレンド入り。

「頭ポンポン。キュンキュンする」などの微笑ましいコメントが寄せられました。

さらにこの後の5回裏には、不振にあえぐ侍の主砲・村上宗隆選手が、今大会初となるタイムリーで復活の狼煙を上げると、日本ベンチはこれまでにない盛り上がり。

特に大谷選手の喜びようは半端なく、戻ってきた村上選手とバンザイするようにしてハイタッチを交わすと、そのまま村上選手のヘルメットをぶるぶると揺らして祝福。

まるで高校球児のように喜びを爆発させました。

この模様を撮影していた米スポーツ専門局『FOXスポーツ』が、「ショウヘイが大喜び」とテキストを添えてツイート。

瞬く間に日本人ファンの間でも反響が広がり

「素晴らしい人間性に泣ける」
「ベンチ雰囲気よすぎ」
「尊い、これは尊い!全人類見て」

などの声が続々と寄せられました。

プレーだけでなく、大谷選手のこういった自然で素直な行動や態度が、侍ジャパンのムードをどんどん良くしていってるんでしょうね。


◆夢のエンゼルス同門対決に見た大谷選手のスポーツマンシップ

この試合、大谷選手とイタリア代表のデビッド・フレッチャー選手による「エンゼルス同門対決」にも注目が集まっていました。

二人は共に1994年生まれでメジャーデビューも同じ2018年。
すぐに打ち解けると、ショウヘイ、フレッチと互いに呼び合い、スマホゲームで交流するなど、今ではエンゼルスファンなら誰もが認める大親友同士です。

今年2月のキャンプ中、アリゾナ州テンピにあるエンゼルスのロッカールームで

「WBCでショウヘイと対戦したら、どうなる?」

と聞かれたフレッチャー選手は

「ショウヘイは簡単に打てるさ。ツーシームはなかなかいいけどね」

と近くにいる大谷選手をジョークで挑発。お互いに対戦を心待ちにしていました。

そんな二人の思いが通じたのか、イタリア代表はオランダ、キューバら強豪国ひしめくプールAの中から、全5チームが2勝2敗で並ぶ大混戦を抜け出して準々決勝進出。

2021年までエンゼルスの名物リポーターで、MLBネットワークのアナリストとして来日しているホセ・モタ氏も

「2人は本当に仲が良かったからね。楽しみだ」

と期待を寄せた同門対決。

試合前、フレッチャー選手が

「大きな試合になる。ショウヘイにいざ勝負。そんな感じです。彼の投球はいつも後ろから見ている。興奮しているし、チームとして戦えるのは大きな喜びだ」

と豊富を語ると、大谷選手も

「お互いにやってみれば分かる。彼のバッティングは見ているし、フレッチも後ろから僕の投球を見ている。個人的には楽しみ。終わってみれば分かる」

と笑顔を見せました。

注目のエンゼルス対決は三ゴロ、右前打の1勝1敗の引き分け。

「何回もあるチャンスではないので。またこの大会が終わればチームに帰りますし。1つの思い出としてという感じですかね」

と親友との対決を振り返った大谷選手。

試合後にはフレッチャー選手や、マイク・ピアザ監督に挨拶に趣き、握手を交わして記念撮影に収まるなど、共に健闘を称え合いました。

試合開始直後には、球審や塁審、そしてイタリアベンチにも敬意を込めて挨拶を交わしていた大谷選手。

大谷選手のスポーツマンシップ溢れる行動に、ドームのファンからは大きな拍手が送られ、SNS上でも絶賛コメントが寄せられました。


◆インタビュー中断?栗山監督の粋な計らい

試合後、大谷選手とイタリアベンチが交流を図ったこの場面では、栗山英樹代表監督の神配慮にも注目が集まりました。

大谷選手が三塁ベンチ前に現れ、フレッチャー選手と健闘をたたえあうと、それを見たカメラマンが一気に2人の元へ。

すでに球場内の壇上で勝利インタビューに応じていた栗山監督がこれに気づき「ちょっと待とうか......」とインタビューを中断。

2人の撮影が終わるまで約50秒間、笑顔で見守った後、「喋らせてもらいます」とインタビューを再開すると、この粋な計らいに場内からは栗山コールが沸き起こりました。

最後は

「最初にチームを作った時に言ったように、日本の大先輩、野球を作ってくれた方の思いを持ちながら戦いたいと思った。
野球が発展するには、米国でやっている選手に勝たないと前に進まない。ぜひ勝ちきれるように頑張りたい」

と決勝ラウンドへの意気込みを語りました。


◆「マイアミへ!!」 試合からわずか4時間20分後の“弾丸出国”

大谷選手ら侍ジャパンメンバーは試合を終えると、バスで羽田空港に移動。
日付が変わった17日午前2時50分に、決勝ラウンドが行われる米フロリダ州マイアミに向けて出国しました。

大谷選手も自身のインスタグラムで

「On to Miami!!(マイアミへ!!)」

と、この弾丸渡米を報告。

熱戦の興奮も冷めやらない中での離陸に、ファンからも続々と応援コメントが寄せられました。

世界一まで準決勝、決勝と「あと2勝」に迫った侍ジャパン。

大谷選手は

「今日みたいに1戦1戦が大事になってくる。1回1回の攻撃が、投球が大事になってくると思うので。
本当に最後に1点多くとっていれば、それでいいという気持ちで全員で頑張りたいなと思います。
あと2つですけど、優勝を目指して頑張りたいなと思います」

と抱負を語りました。

まさに、一つも取りこぼせない「ヒリヒリした」状況で野球ができることを楽しみ、そして勝利する。

大谷選手のシーズンはすでに始まっているのかもしれません。



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